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京都産業保健総合支援センター メールマガジン153号 2014/5/1
ホームページ:http://www.kyoto-sanpo.jp
発行:京都産業保健総合支援センター 所長 森 洋一



 
産業医学相談員  香月 昭人

産業保健分野における、健康を損なう様々な公害は、かつては労働する人々中心の問題であった。
しかし、近年の低価格・粗品・乱造文化は膨大な量の地球資源を廃棄物に 変え、汚染物質の垂れ流し・環境破壊・大気汚染によって、もはや地球環境全体に影響する深刻な事態となりつつある。
「直接自らに関係なければ流してしまえ」という、人間としての徳性のカケラもない中国の環境汚染はもはや極限に達しつつある。
河川が色とりどりに染められ、地下水枯渇と汚染、特にPM2.5による大気汚染は、中国の各都市、首都北京など「人類の生存に適さぬ」環境にしてしまっている。
わが国の公害対中投資は半減したと言うものの、すでに中国に進出している日本企業は、いまだ多くの在中邦人家族を抱えている。
これらの社員・家族の健康問題対策はどうなっているのであろう?
彼国のことだから、後々、中国の環境汚染は、進出した日本企業が原因とまで謂われかねぬことに気がついているのであろうか?
かっての黄砂は洗濯物が汚れる程度で済んだが、最近では、偏西風は黄砂にかてて加えて粒子中央径2.5ミクロン以下の汚染微粒子PM2.5を伴って運んでくる。
PM2.5の汚染源は、2005年から使用され始めた内モンゴルの硫黄分の多い低品質石炭に由来する。
それを中国では公害未処理火力発電所から家庭までが燃やしているらしい。
さらに怖いことには、この内モンゴル石炭はウラン鉱と混在しており、そのウラン含有率0.1-1%というが、中国の石炭総産出量は2007年で約30 億トンというから、そら恐ろしい。
最近激増したわが国の花粉症は、モータリゼーションによる未燃焼炭化水 素粒子のアジュバント効果が原因と推測されている。このPM2.5も花粉と一種に吸入すれば免疫成立はまず一層確実なものとなろう。
かてて加えて、ウラン微粒子が混在しているとなれば、花粉症のみならず、石綿禍以上の悪性新生物の発生の原因となりはしないか、大変心配である。
すでに、中国はがん大国であり、2012年WHO統計によると、人口比率19% の中国の新規肺ガンは世界のそれの36%、肝・食道ガンは50.5%にも達している。
またPM2.5は米の研究によると出産時の低体重や神経組織欠損の原因 にもなるといい、環境問題を無視し続ける中国の現状は、まさに壮大な人体実験とも言える。
グローバル化は困ったものである、企業は、一部資本家の金儲けのため 「もっと造れ、もっと売れ、もっと儲けろ」と全力疾走を続けさせられる。
いい加減に落ち着いて、後にも先にもひとつしかないこの地球を大事にしたいと思うが・・・。


◇「産業保健スタッフ活動報告~企業におけるヘルスプロモーション活動の実際~」に参加して◇
 

保健指導相談員 村田 理絵
 

今年度より、データ分析に基づく保健事業=「データヘルス」が国全体で推進されようとしていますね。「データヘルス」は健康保険組合が主体的にとりくんでいくものですが、事業者にとっても大きなインパクトのあるものになってくると思われます。
そのような中、企業においては従来から取り組まれている健康診断の事後措置やヘルスプロモーション活動等の健康管理の取組は、成果も含めて今後益々重要視されてくると思われます。

 そこで今回は、3月末に産業保健総合支援センターが開催した産業看護職研修会「産業保健スタッフ活動報告の~企業におけるヘルスプロモーション活動の実際」についてお伝えします。
 研修会は、最初に各事業場において活躍されておられる産業保健スタッフの方に実際に活動していることを発表して頂きます。その発表内容をもとに、参加者同士でグループ討議により情報交換して頂き、最後に総括としてアドバイザーの先生にコメント頂くという流れになっています。他企業の産業保健スタッフとの交流の場として頂くことと、今後の産業保健活動へのよい刺激になればと思い、年度末に恒例として「産業保健スタッフ活動報告会」を開いています。今回も40名近くの参加申し込みがありました。
 
 では、今回の研修会で活動報告された3名の産業看護職の発表内容をご紹介します。
 最初に、A社産業保健師より企業風土に合わせた健康増進活動と、教育を中心としたメンタルヘルス対策に関する取組事例を発表頂きました。健康増進活動として、①健康教育(社員全体に対し実施するポピュレーションと健康リスクの高い人に対し実施するハイリスクについて)、②健康チャレンジマラソン(全社展開の活動)、③禁煙活動(安全衛生体制の活用、健保組合と労働組合との連携)、④外部の食堂業者と連携してのヘルシーメニュー等の展開等、様々な取組みをされていました。印象に残ったことは、社員個々に合った健康取組みができるよう馴染みやすいテーマを設定するとともに、多種類の健康の取り組みメニューを準備していることと、取り組んだことに対し問診や健診データ等で取組みの評価をしていることです。産業保健師の熱心な取り組みが伝わってきました。

 次に、B社産業保健師より、フィジカル(GENKI Projectや生活調査票等)、メンタル(メンタルヘルス研修等)、職場環境(ヘルシーメニュー提供、喫煙対策、VDT対策等)の3つの面からアプローチしている事例を発表頂きました。中でも、フィジカルの面からのアプローチにおいては、「GENKI Project」と題して各職場でチームを編成し、自社製品の活動量計を使用し全社で歩数と活動量を競わせる活動や、一定以上の血圧値の社員に対し医療職面談を実施し、その対象者の日々の自宅血圧測定結果が医療職へ転送されるシステムを導入しているところなどは、IT環境が整っているB社ならではの取り組みだと思いました。

 最後にC社産業保健師より、社員食堂の「ヘルシーメニュー企画」の取り組みについて発表頂きました。健診診断の分析結果から、血圧、脂質等の生活習慣病関連の有所見率が増加していること、肥満者が増加傾向であることから「ヘルシーメニュー企画」に至ったことや、野菜の量や味などについて何度も試行錯誤をされたことなど、企画の苦労話についてお話頂きました。外部の給食業者の方や総務課の方と密接に連携して取り組まれた様子がひしひしと伝わってきました。

 その後、3名の保健師より提供頂いたテーマに基づいてグループ討議が行われ、活発な意見交換が行われました。
 そして最後に、アドバイザーの朝枝哲也先生(オムロン全社統括中央産業医)より総評をして頂くとともに、「ヘルスプロモーション」についてして分かりやすく講義頂きましたので、その一部をご紹介します。
 ヘルスプロモーションの概念について、日本では「健康増進」「健康づくり」と訳され、WHO(世界保健機関)が1986年のオタワ憲章において提唱した新しい健康観に基づく21世紀の健康戦略で、「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし、改善することができるようにするプロセス」と定義されていること。「健康教育」が個人や集団の健康意識・行動に働きかけるのに対し、「ヘルスプロモーション」は健康教育の概念にプラスして個人や集団をとりまく「環境」に対しても働きかけることをも含んだ概念であること。日本では、2000年に「健康日本21」が提唱され、そして2002年に「健康増進法」が施行されるなど、21世紀に入ってから積極的に「ヘルスプロモーション」が取り組まれるようになったこと。「健康日本21」は具体的な数値目標が設定されていることが特徴で、健康情報提供型の手法であり、「節約型の健康づくり」等などと話されたことが印象に残りました。
 また、健康を売っていくためにはマーケティングにおける4P:製品(product)、価格(price)、宣伝(promotion)、流通(place)を常に考えておかなければいけないことについても教えて頂き、大変勉強になりました。

 報告会終了後にとったアンケート結果より「様々な事例や解決策を教えて頂き勉強になった」、「他の企業の方と情報交換ができる貴重な場であった」「すごくためになる研修だった」など多数の好評な意見も聞かれ、参加者にとって有意義な研修になりました。今年度の3月にも産業保健スタッフ活動報告を予定しております。産業保健スタッフの皆様、是非ご参加ご発表のご協力をよろしくお願いします。


◇言葉の定義 と コミュニケーション◇
 
メンタルヘルス対策促進員 市 綾美 
 

同じ言葉を使っていても、相手と自分では違うニュアンスで使っているように感じたことはないでしょうか。その結果、段々話が噛み合わなくなったり、あるいは予想通りに物事が進まなかったりした経験は、きっと多くの人にあるのでないかと思います。
私はカウンセリング中に、「あなたがおっしゃった〇〇とは、具体的にどういうことか教えてもらえませんか」とよくお願いします。多くの人は、一瞬止まって、それから自分の考えるところを語ってくれます。

例えば「責任を取る」という言葉。これは結構曖昧な言葉で、人によって定義が違いますし、同じ人であっても場面によって変わります。「現状回復すること」「元の状態より良くすること」「再発防止のための対策を立てること」「潔く謝罪すること」などなど…。 仮に誰かから「責任を取りなさい」と言われたとして、相手がどれを求めているのかを理解していなかったら、余計に相手を失望させたり怒らせてしまう可能性が高くなります。

これは、対人関係の中で起こりやすい「コミュニケーションのずれ」です。
先程、説明を求めると多くの人は一瞬止まるといいましたが、話し手はひとつの定義を持っており、それはその人にとって自明の理、説明することなど想定していないからです。「責任を取る=〇〇」は相手との共通の認識であり、相手が「責任を取る=△△」と考えていることなど思いもよらないわけです。さらにいえば、相手が「責任を取る=??」 と思っていることだってあり得ます。そうなってしまうと、そもそもコミュニケーションが成り立っていない恐れすらあります。

お互いの言葉の定義をすり合わせることは、良いコミュニケーションに欠かせない要素のひとつです。大事な言葉は、お互いの定義が共通しているかどうか時折確認してみてはいかがでしょうか。案外おもしろい違いがわかって、そこからコミュニケーションが深まるかもしれません。


■うつ病などで休職中の方のスムーズな職場復帰をサポートします
リワーク(職場復帰)支援のご案内(京都障害者職業センター)■

京都障害者職業センターでは、主としてうつ病等の精神疾患により休職している方、その方の復職を考えている事業主に対して、主治医等と連携しながら職場に戻るためのウォーミングアップを行い、円滑に職場復帰していただくための支援プログラム<リワーク支援>を実施しております。
 支援期間やカリキュラムは目標に応じて個別に設定します。標準的な支援期間は3カ月程度です。

◆リワーク(職場復帰)支援のご案内
http://www.jeed.or.jp/location/chiiki/kyoto/pdf/kyoto_rework_sien01.pdf

◆リワーク支援のご利用を検討される事業主様へ
 利用を検討される事業主様は直接京都障害者職業センターでお電話下さるか、「リワーク支援見学会」(隔月1回開催)へお越しください。

◆リワーク支援見学会のご案内(事業主様向け)
http://www.jeed.or.jp/location/chiiki/kyoto/pdf/kyoto_rework_kengaku.pdf
*事前に「参加申込書」(リワーク支援見学会のご案内に添付)によりFAX (075-341-2678) またはe-mail(kyoto-ctr@jeed.or.jp)にてお申し込みください。

◆リワーク支援説明会のご案内(休職されている方向け)
 事業所の方と休職されている方が一緒に参加を希望される場合は、休職者向けの「リワーク支援説明会」(月2回開催)にお越しください。

◆リワーク支援説明会のご案内(休職されている方向け)
http://www.jeed.or.jp/location/chiiki/kyoto/pdf/kyoto_rework_guide.pdf

◆リワークセミナーのご案内(休職者向け)
http://www.jeed.or.jp/location/chiiki/kyoto/pdf/kyoto_rework_sien03.pdf

◆平成26年度リワークセミナー実施予定
http://www.jeed.or.jp/location/chiiki/kyoto/pdf/kyoto_rework_yotei.pdf

◆京都障害者職業センターhp
http://www.jeed.or.jp/location/chiiki/kyoto/26_kyoto.html
 


◆産業保健に関する各種研修会のお知らせ◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/5semina/semina-s.htm
 ※5月~6月開催の研修会を掲載しています。奮ってご参加下さい。
 ※当センターが実施する「産業医研修会」について、付与できる単位は
  「生涯研修」のみとなります。
  「基礎研修」を受講される方は、京都府医師会主催の研修会を
   ご覧ください。
  http://www.kyoto.med.or.jp/member/sports/index.html

◆京都産業保健総合支援センターホームページ◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp

◆京都産業保健総合支援センターご利用案内◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/3riyo/riyo.htm

◆相談のご案内◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/4soudan/soudan.htm

◆図書・教材のご案内◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/6tosyo/tosyo-a.htm

◆産業保健トピックス◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/8topi/topi.htm

◆メンタルヘルス対策支援サービスのご案内◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/mental/index.htm

◆メールマガジン(バックナンバー)◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/index2/merumaga/merumagaframe.htm

◆東日本大震災関連情報◆ http://www.rofuku.go.jp/higashinihon_daishinsai/tabid/422/Default.aspx


発行人:森 洋一  編集人:吉岡 宏修  info@kyoto-sanpo.jp
編集協力:京都産業保健総合支援センター産業保健相談員
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