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京都産業保健総合支援センター メールマガジン154号 2014/6/2
ホームページ:http://www.kyoto-sanpo.jp
発行:京都産業保健総合支援センター 所長 森 洋一


◇京都産業保健総合支援センター ホームページ情報◇

1)石綿障害予防規則の改正及び労働者の石綿ばく露防止に関する技術上の指針の制定について <2014.5.2 UP>

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◇うつ病の心因論と器質論◇
産業医学相談員 小林 一之

 過酷な労働環境の下、うつ病が増加しているといわれる。そこでうつ病は心の風邪、お話をして直そうとするのが一般的な潮流となっている。心因論の立場である。ところがカウンセリングをかさねてもなかなか良くならないことが多い。わたしも何時間も時間をかけお話をしてもよくならず、1回の電気ショックで軽快したケースに出会っている。心論、カウンセリングでは済まない点があるのである。すると器質的なものではと考えるようになる。すると器質論者になり脳の変化だ、セロトニンが原因だ、薬で治そうということになる。
 ひどい気候の冬、雪が積もりこれでは春になっても桜が咲かないのではと思うときがある。ところが4月になると年により早い遅いはあるが桜はちゃんと咲くのである。乱暴な話かもしれないが、うつ病にもそういう点がある。つまり、なにか動物的、植物的な感じでうつ病が発生してくるのである。うつ病が起こると人はあれが悪かった、あれさえなければ起こらなかったと原因を詮索する。しかしなぜ起こったのかわからない時もたくさんある。うつ病から回復してうまくいっていて、心の原因らしきものがないのにまた起こるのである以前、親子の医者がうつ病の患者の血液、尿などを検査したがわからない、心の原因を調べたがわからない。とうとう集めたデータを将来研究が進めば解明されるのではと保管した。その親子が何か気候が関与しているのではと言ったそ
うである。躁うつ病に詳しい研究者に聞いたお話である。
 さて、ひとつの病気を見て原因を考え治療していくのは客観的、冷静であらねばならない。
それが医学なのである。何十年も精神科医をやっていると意地悪になり心理の先生にはカウンセリングって効くのか、直せるのかと詰問したくなり、また医師には薬で治すってできるの、本当にセロトニンが原因かと訊くのである。むしろこういう薬ができてからうつ病が増えている。1%以内であつた発生率が(80年代、厚生省、東大)16%にも増えていると主張する医師が出てくる現状である。こうなるとうつ病は医学を離れ文化論的議論になってくる。もはや落ち着いた医学ではないのである。私自身はうつ病の概念が広がり増加しているようにみえるが、昔から定義しているうつ病はそう増えてはいないと考えている。むしろ統合失調症が減少しているように本当のうつ病も減少しているのではないかとも思われる。今日この頃、「私はうつ病でしょうか。」と診察場に来られよく喋られるのが普通であるが、昔は家族が、喋らない、主張しない、うつ病の方を抱えるように連れてこられたのである。
 最後に、また結局何のためにもならない結論でしかでないが、今のところうつ病は何か動物的、植物的といえる人の体の内なる原因で起こり、また消える。それが自然現象のように起こったり、また仕事上のトラブルや家族との問題から起こったり、また桜が咲くように気候、特に寒さ、曇天などが絡んで起こってくると:ムルチディメンジヨナル:に考えるのがいいのではないかと思う。数はそう増えていない。そして本人は治らない、トンネルに入って出られないと感じるのであるが、大抵は軽快する。つまり、出口のないトンネルは無いのである。ただ再発性が高いので、そこを解決するように志向する要がある。


 カウンセリング担当相談員 安元 寛子
 
 職場の相談室で上司の方や産業医さんから、今の若者は、言われたことはきちんとやるが、指示待ちで自ら行動しない、打たれ弱いという声を時々聞きます。このような声の背景には様々な要因が考えられると思います。
 先日、当センターにて来談されたAさんの困り事は「職場で上司に話しかけにくい。スケジューリングがうまくいかない。」ということでした。お話を聴いていくと上司に相談の必要があるときに、「静かな職場で話をしに行くとなると、周りの人が話の内容を聞いているに違いない、上司に話すには十分に話すための準備をしていかなければならない。」と思い、いろいろ考えあぐねて時間がかかってしまうそうです。時間がかかっても相談に行くことができれば「丸投げ」で相談に行くよりいいのですが、問題は躊躇するあまり、先送りしてしまい、その結果仕事が積み上げ状態になっているということでした。このようなことが日々起こっているために、結果として上司からすれば「ほうれん
草」(報告・連絡・相談)をしない。自分から積極的に行動を起こさない、スケジューリングがまずい、ということになっていたと思われます。Aさんは学生時代、とても優秀で結果を出すときは正しい答えを出し、そのことで評価され、今まで失敗や挫折をほとんど経験してこなかったようです。自分からアイディアを出したり、未開拓のものへのチャレンジは、必ずしも良い評価を受けるとは限りません。危険であり、身を潜めているほうが安全ではあります。しかし、身を潜めていれば傷つくことは避けられますが、それでは成長を望むことはできません。
 最近、「ストレス要因に晒されても、心を健康な状態に維持する力、あるいは、一時的に不適応状態に陥っても、それを乗り越え健康な状態へ回復していく力」として、先日のNHK『クローズアップ現代』でも取り上げられていた「レジリエンス」という概念があります。「Resilience」は弾力性という意味ですが、絨毯など踏みつけられてもまた毛並が元に戻る。そのようなことから、「心の回復力」という意味で用いられています。
1970年頃から研究され始め、第2次世界大戦でホロコーストを体験した孤児たちのその後の調査で、トラウマを経験し生きる気力を持てない人たちがいる一方で、トラウマを乗り越え生活に、仕事にと前向きに取り組む人たちがいることがわかりました。その人たちは、同じ経験をしながらも逆境を乗り越えることができ、厳しい状況でもネガティブな面だけでなく、ポジティブな面を見出すことのできる人々でした。その後の様々な調査や実験から、レジリエンスな人は個人的能力と周囲の人からのサポートを持っていることが明らかとなりました。そうなる為には、感情をコントロールする力、論理的な問題解決能力、楽観性、自己効力感、自尊感情などが必要なものとして挙げられるようです。
 日本には昔から「七転び、八起き」という言葉があります。八回起き上がるには、七回転ぶ必要があります。先のAくんも何よりも失敗を恐れず、失敗したとしても、状況に一喜一憂して結果ばかりに目をやらず、失敗の中からも成長していると感じられる楽観性を一緒に育てていければと思っています。


 メンタルヘルス対策促進員 和田 昌子
 
 先日、「管理・監督者のための叱り方・褒め方」研修をさせていただいたところ、主催者の予想を超える方々に参加して頂きました。
このタイトルのセミナーを最近よく目にするようになりました。そういえば、色々なタイトルが気になってきました。ストレスコントロール、アンガーマネジメント、雑談力、上司力、情況把握力(自分と周囲の人々や物事の関係を理解する力)つまり空気を読む力・・・・・などなど。
ストレス社会の産物?パワハラと思われないか?管理監督者の苦悩であろうか?等々・・・・・
上司といえども年上の部下もいる。表情の読めない新入社員を叱ると涙目になり、欠勤になった。管理監督者の苦悩は続く。
仕事の結果や数字だけを追えばいい時代は終わりました。
上司の指導力は、業務改善のため叱ったり、モチベーションを上げるよう褒めたりしながら、まさに上司自身の情熱、人間力、生き方さえも問われているのかもしれません。     
最近のセミナーを見ていると、上司が磨かれて、篩(ふるい)にかけられる時代であるように思います。
 「やってみせ、言って聞かせ、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ。」
 「話し合い、耳を傾け承認し、任せてやらねば、人は育たず。」
 「やっている姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」 
  山本 五十六
指導力とは、人を思いやり、能力を信じ、育てる愛なのだとつくづく思う次第です。
ふと・・・・・・力尽きそうに思った時はご連絡下さい。
情熱が消えてしまわぬうちに・・・・・・。
 


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 ※7月~9月開催の研修会を掲載しています。奮ってご参加下さい。
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  「基礎研修」を受講される方は、京都府医師会主催の研修会を
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