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京都産業保健総合支援センター メールマガジン162号 2015/2/2
ホームページ:http://www.kyoto-sanpo.jp
発行:京都産業保健総合支援センター 所長 森 洋一


◇京都産業保健総合支援センター ホームページ情報◇

1) 「有害物ばく露作業報告」の手引き<2015.1.23 UP>

2) 「STOP!転倒災害プロジェクト2015」による転倒災害の防止について<2015.1.30 UP>
      


◇顔を触らない!◇
産業医学相談員 酒井 泰彦

 この1月16日に、国立感染症研究所は「直近1週間のインフルエンザ患者が全国的に増え、警報レベルに達した」と発表しました。昨年は全国平均で警報レベルを超えたのが2月初旬辺りでしたから、今年は約3週間早い流行ということになります。これをお読みの皆さんは大丈夫でしょうか?罹ってしまうと本人が辛いのは勿論ですが、仕事を休まれると職場にとっても辛く、さらに職場で流行しようものならその損失は計り知れません。そこで、今回はインフルエンザ感染予防のツボをご紹介します。
 インフルエンザは、病原体のウイルスが口や鼻などの粘膜から体内に入ってくることで発病します。そのため以前からインフルエンザの予防といえば、手洗い・うがい・マスク着用と言われてきました。しかし、インフルエンザウイルスは粘膜に付着すると20~30分で体内に侵入するため、うがいによる予防効果は限定的です。また、マスク着用については「普通のマスクではウイルスを通すので予防には無効だ」などという意見もあって、いわゆるマスク論争が毎年一部で繰り返されています。
 数年前に米国の国立衛生研究所(NIH)が地下鉄の乗客249人を対象に行った調査によると、つり革や手すりなどを触る回数が1時間当たり平均3.3回、顔を触る回数が同じく3.6回という結果で、このことから、外出の際には病原体を手に付着させる機会が頻回にあり、またその手で顔を触ることで感染するリスクが高くなるということが明らかになりました。別の調査では、人は3時間で鼻を平均16回、唇を24回も触るという報告や、パソコン作業中の人は5分間に1~3回も顔を触るというデータもあり、私たちが無意識のうちにいかに頻回に自分の顔を触っているのかがわかります。実際、この原稿を打ち込んでいる私も、つい顔を触ってしまうことが先ほどから何回もありました。
 ということで、インフルエンザ予防の極意は、「外出して何かを触ったらその手には病原体が付いているものと考えこまめに手を洗う」「手洗い後に何かを触ったらその手で顔を触らない」ということに集約されます。そう考えると、マスク着用は自分の鼻や口を触れなくなるという意味で効果的かもしれません。しかしマスクは覆面と同じで、人と接する職業などの場合は着けるわけにはいきませんから、結局は「顔を触らない」ということがインフルエンザの予防には最も大切なのです。簡単そうでなかなかできないのですが、是非トライしてみてください。


◇従業員の健康増進と経営戦略◇
労働衛生工学相談員 桑村 明男

 2025年には団塊の世代がすべて後期高齢者になります。
 2010年における日本の総人口が約1億2800万人、15歳~64歳の人口が約8100万人これに比べて2025年の総人口が推定1億2000万人、15歳~64歳の推定人口は7600万人。労働可能人口が500万人も減少します。間違いなく人手不足の時代が到来します。いや、もう始まっています。街のいたる所に求人広告が目につきますし、コンビニやスーパーには求人の張り紙が数多く見られます。今後、「人手不足」倒産も増えるかも知れません。
 人口減対策は取り敢えずさて置き、ここでは従業員の定着率を高め、さらには優秀な人材を採用するにはどうすればいいか、と云うことを従業員の健康増進という視点から考えてみたいと思います。定着率を高めるには、高賃金、きれいなオフィス、美味しい社員食堂、やりがいのある仕事、フレックスタイム制等々いろいろあるかも知れませんが、一番大切なことは健康で活き活きと働ける職場作りではないでしょうか。昨今、社員をより健康にすることで会社の業績を向上させる取り組みが新たな経営戦略として注目されています。「健康会計」や「健康戦略」といった書名の本が増えてきました。
 長時間労働を黙認する、有給休暇を取らせない管理職は今後淘汰されていく時代が来ると思います。10年先、20年先を見据えた人事マネジメントの構築が必要です。いま始めないと将来後悔するかも知れません。
 社員の健康は健康(安全)配慮義務があるから仕方なしに取組むのではなく、企業の戦略テーマの一つと捉えることが重要です。例えば健康診断の有所見者を減らすだけでも長い時間が掛かります。しかし間違いなく効果は出ます。医療費、不意の病欠、うっかりミスによる不良品の作り込みや流出、労働災害などが減少します。従業員が健康増進と企業の成長を重ね合わせて実感できるような職場は生産性が高く品質も安定し、また労働災害やメンタル不調者は少なくなるのではないでしょうか。従業員が健康で活き活きと働ける環境を整えることが企業にとって最重要課題の一つとなる時代はすでに始まっています。
 コンサルタントとして常に変化の兆しを敏感に捉え、より実践的な情報発信に取り組みたいと思っています。


◇精神障害者の就職のむつかしさ◇
メンタルヘルス対策支援促進員 宮本理恵子 

 精神障害者の就職困難を目の当たりにしました。京都障害者職業センターの求人のファイルを見てみると、そのハードルの高さにびっくりしました。
 こ、こ、これは・・・!! 無理~。
 なぜなら労働時間は1日6~8時間、週5日勤務、そしてスキルが必要という求人が案外多く(もちろん全部がそうではありません) 、まるで一般求人のような内容でした。これでは働くことが出来る人が限られます。
 「このような条件で働けるようになってから探しに来てね」と言われていると思い、時間のかかる問題には落ち込んでおられる障害者がおられるのが実情です。
 就労支援A型事業所においては、精神障害者の症状にあわせて、柔軟に勤務日数や繁務時間数を決定してくれる事業所もありますが、A型事業所であっても、1日7時間、週5日勤務が出来なければ採用出来ないと、不採用になった方もおられます。
 精神障害者にとって働けるということは、自己肯定と自己承認を高めるとともに自信と安心感を得、そして病状を回復していく一番の手段であり大きな意味があると私は思っています。
 就労支援B型事業所や就労支援移行型事業所も就労にむけての大切な場所ではありますが、お金を稼ぐことができません。やはりお金を稼ぐことより希望や目的がより一層深まるのではないでしようか。
 求人の条件に対応できるように症状が回復できるのを待っていたらいつになるか分かりません。柔軟に対応してくれる事業所が増えてくれることを望みますが、精神障害者の求人状況を見るにつけ、現実は厳しいと痛感させられます。
 私の友人が「日本でいちばん大切にしたい会社」という本をプレゼントしてくれました。その中に精神障害者の方々と働く場との「つながり」をつくる‘株式会社ラグーナ出版’、障害者の雇用に力を注ぐ‘株式会社大谷’を知りました。2社ともに障害者のための会社です。
 このような会社がどんどん増えて精神障害者の方が笑顔で毎日暮らしていけることを祈っています。



◆産業保健に関する各種研修会のお知らせ◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/5semina/semina-s.htm
 ※1月~3月開催の研修会を掲載しています。奮ってご参加下さい。
 ※当センターが実施する「産業医研修会」について、付与できる単位は
  「生涯研修」のみとなります。
  「基礎研修」を受講される方は、京都府医師会主催の研修会を
   ご覧ください。
  http://www.kyoto.med.or.jp/member/sports/index.html

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発行人:森 洋一  編集人:吉岡 宏修  info@kyoto-sanpo.jp
編集協力:京都産業保健総合支援センター産業保健相談員
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