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京都産業保健総合支援センター メールマガジン172号 2015/12/1
ホームページ:http://www.kyoto-sanpo.jp
発行:京都産業保健総合支援センター 所長 森 洋一


◇京都産業保健総合支援センター ホームページ情報◇

1) 改正労働安全衛生法による化学物質のリスクアセスメント実施について
                         <2015.11. 2UP>
2)「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」が公開されました。
                         <2015.11.24UP>
3)「長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書作成
  マニュアル」が公表されました。
        <2015.11.24UP>


◇ヘルスコミュニケーション◇
  保健指導相談員  村田 理絵

 皆さんは“ヘルスコミュニケーション”をご存知ですか?
ヘルスコミュニケーションとは、健康に関連したコミュニケーションのことで概念としては広く、保健医療の専門家が、「個人」や「集団」「社会」に対して、分かりやすく 情報を提供する等、対象のニーズに応じてコミュニケーションの専門的な知識や技術を 適用することです。例えば、特定保健指導の対象者に特定保健指導を受けてもらうためには、特定保健指導を受ける必要性等の情報を分かりやすく伝えるだけでなく、行動変容に関する理論やヘルスプロモーション等のノウハウを身につけることも重要です。昨今、人々や社会の行動変容に“戦略としてのヘルスコミュニケーション”を取り入れることが注目されています。

 特定健診・特定保健指導が開始され今年で8年目を迎えます。最近、保健支援者から「特定保健指導の対象者のうち、7~8割がリピーター(特定保健指導を2回以上受けたことがある方)で、保健指導にもマンネリ化がきている。どう打開したらよいのか?」 といったような声をよく耳にします。そこで、今回、そのような悩みの解決の糸口を見つけたいと思い、ヘルスコミュニケーションの専門家として国内はもちろん海外でもご活躍されておられる蝦名玲子先生(グローバルヘルスコミュニケーションズ代表)をお招きし、ご講義いただきました。研修に参加された産業看護職の方々に大変好評でしたので講義内容の一部をご紹介致します。

1.保健指導のマンネリ化をどう打開していったらよいのか?
 「どのレベルにおいても、コミュニケーションの基本は“相手を知ること”。対象とする人はどういう人達で、何を求めているのかを理解することが不可欠。相手を知らないと効果的なコミュニケーションをとることはできない」と蝦名先生がおっしゃっていました。
 つまり、“保健指導にマンネリ化がきている”とは、対象に問題があるのではなく、私達支援者の指導がマンネリ化しているのではないだろうか、対象のことをきちんと理解できているのだろうか、と一度振り返ることも必要です。

2.保健指導がうまくいく人とうまくいかない人がいるのはなぜか?
  一般的に保健指導がうまくいく人は“2つの効力感”が共に高い人といわれています。2つの効力感とは「反応効力感=生活習慣を改善すると、効果が出せるだろうと感じる程度」と「自己効力感=私なら、生活習慣を改善することができるという自信の程度」です。 つまり、この2つ効力感を確認し、その効力感の程度に応じて対応すると効果が出やすくなります。

3.2つの効力感の程度に応じた対応とは?
  蝦名先生は2つの効力感の程度に応じて4つのタイプに分類しています。

1)「まかせておいて子さん」
 反応効力感、自己効力感共に高いタイプ。生活習慣を改善したら、その効果が大きいし、私ならできる、と考えている。
 ⇒普通の保健指導でOKです。健康情報を対象の認識レベルに応じて提供したり、対象が行動変容するにあたって不安に思っていること等を聞きだす等し、“対象をより知る”ための時間をしっかりとるようにしましょう。

2)「自信アリ子さん」
 反応効力感が低く、自己効力感が高いタイプ。生活習慣を改善しても大して効果が期待できないからしないけど、もし私がしたら、きっとうまくできる、と考えている。
 ⇒視点を変えさせて反応効力感を高めることです。そのために、より深く質問したり、 過去の取組み等に対し肯定(承認)したり、対象の話を傾聴・要約することで相手の視点を変えていく方法があります。その他、支援担当者を変更するのも一つの方法です。

3)「自信ナシ子さん」
 反応効力感が高く、自己効力感が低いタイプ。生活習慣を改善したら効果は大。でも私にはムリ、と考えている
 ⇒自己効力感を下げている要因(個人的な要因、環境要因)を聞きだし、一緒に解決策を考えたり、過去の取組み等に対して肯定(承認)することが大切です。

4)「関係ナシ子さん」
 反応効力感、自己効力感共に低いタイプ。生活習慣を改善しても大して効果なんてないだろうし、その自信もない、と考えている。
 ⇒「自信アリ子さん」に対する対応と同様に、視点を変えさせるために相手から情報を 聞き出していくことをしながら、相手の関心(趣味等)に応じて相手が「え?そうな の?」と思わず言ってしますような驚きの話をしたり、「楽しい」いい気分にさせて、自己診断や他の行動をとる選択肢の存在を考える機会を提供します。

 2時間とおしでの講義だったのですが、シンプルで分かりやすいスライドと気の利いた小道具を用いての実践を交えながらの講義だったため、あっという間の時間でした。また、蝦名先生のプレゼン力の高さも素晴らしく、私達看護職のお手本にしたいと思いました。
 研修会終了後にとったアンケートからも、研修会について97%の方が有益であるとの 回答でした。また、「とてもわかりやすく実践につなげやすい。私自身も“やるぞ”の気持ちにさせていただきました」「指導の際に“どうしたらいいだろう?”と考えてい たことが、今日の研修のお話で納得できました」など多数のご意見もありました。
 
 今回の蝦名先生の講義を受けて、コミュニケーションや保健指導の基本は「相手を知る こと」であり、保健指導という短い時間の中でいかに相手を知っていくのか、また、相手のタイプに応じてアプローチを変えていくスキルや戦略をたてることの重要性を実感した次第です。以下は、蝦名先生が研修会でご紹介して下さった著書です。こちらも参考にして頂ければと思います。

『ヘルスコミュニケーション―人々を健康にするための戦略』
  蝦名 玲子(著)/ラ イフ出版社  他、沢山の著書をだされています。
 蝦名先生のHPもご参照下さい。


◇いよいよストレスチェック制度が動き始めます!◇
  メンタルヘルス対策促進員  市 綾美
 
今最も旬な話題ということで、ご期待に応えて(?)ストレスチェック制度のお話です。
事業者の懸念のひとつに、「高ストレスと判定を受けた人が面接を申し出てくれるのか」ということがあります。ご存知の通り結果は本人にしか通知されませんから、それが心配というわけです。私は、高ストレスと判定を受けた場合に取れる手段は3つあることを、従業員に説明していただくようお願いしています。
その手段とは、
  ①事業所に申し出て医師の面接を受ける 
  ②相談窓口(事業所内または外部委託)に相談する 
  ③外部の医療機関か相談機関へ行く 
の3つです。
 ①の利点は、就業上の措置等が必要であった場合、医師から事業所へ速やかに意見がなされる点です。一方で、面接を申し出た時点で高ストレスであったことが事業所に知られてしまうのが心配だと感じる従業員もいるでしょう。しかしながら、そのことをもって事業所が不利益な取り扱いを行うことは禁止されていますから、それも伝えます。
 ②の利点は、相談内容を事業所に知られることがないという点です。また、高ストレスでなくても相談できますし、事業所をよく知っている相談担当者であれば話も早いでしょう。就業上の措置等が必要であった場合も、希望すれば相談担当者から会社へ伝えてもらえます。ただし、その必要があってもどうしても事業所には伝えてほしくないという人には、その後のフォローをどうするかという問題が残ります。
 ③は事業所には何も知られることはありませんが、自費が発生します。また、就業上の措置が必要となれば、従業員自ら事業所に説明しなくてはなりません。
 これらのことを説明し、高ストレスであった場合は必ずいずれかの手段を取ってもらえるよう事前に伝えておくことが必要だと考えます。
 最後に老婆心ながら付け加えさせていただきますが、この制度のそもそもの目的は、メンタルヘルス不調者の「把握」ではなく「予防」です。予防の観点から面接や相談を勧めるのだということをしっかり伝えていただくようにお願いいたします。


◇ストレスチェック制度について◇

*「こころの耳」に「ストレスチェック制度」についてまとめられています
 制度に関する新着情報をチェックできます。
→ http://kokoro.mhlw.go.jp/etc/kaiseianeihou.html

*「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」が公開されました。  → http://stresscheck.mhlw.go.jp/        
   なお、「実施プログラム利用に関するコールセンター」が
   12月上旬に開設予定です。それまでの間のお問い合わせ先
    厚生労働省労働衛生課産業保健支援室
    電話:03-5253-1111 (内線5493)

*「長時間労働者、高ストレス者への面接指導に関する報告書・意見書
   作成マニュアル」が公表されました。               → http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/manual.html


◆産業保健に関する各種研修会のお知らせ◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/5semina/semina-s.htm
 ※12月~3月開催の研修会を掲載しています。奮ってご参加下さい。
 ※当センターが実施する「産業医研修会」について、付与できる単位は
  「生涯研修」のみとなります。
  「基礎研修」を受講される方は、京都府医師会主催の研修会を
   ご覧ください。
  http://www.kyoto.med.or.jp/member/sports/index.html

◆京都産業保健総合支援センターホームページ◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp

◆京都産業保健総合支援センターご利用案内◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/3riyo/riyo.htm

◆相談のご案内◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/4soudan/soudan.htm

◆図書・教材のご案内◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/6tosyo/tosyo-a.htm

◆産業保健トピックス◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/8topi/topi.htm

◆メンタルヘルス対策支援サービスのご案内◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/mental/index.htm

◆メールマガジン(バックナンバー)◆
  http://www.kyoto-sanpo.jp/index2/merumaga/merumagaframe.htm

◆東日本大震災関連情報◆ http://www.rofuku.go.jp/higashinihon_daishinsai/tabid/422/Default.aspx


発行人:森 洋一  編集人:真下 尚之  info@kyoto-sanpo.jp
編集協力:京都産業保健総合支援センター産業保健相談員
発行/配信:京都産業保健総合支援センター http://www.kyoto-sanpo.jp