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京都産業保健総合支援センター メールマガジン 184号
平成28年度 第9号 2016/12/1
ホームページ:https://www.kyotos.johas.go.jp/wp
発行:京都産業保健総合支援センター 所長 森 洋一
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◇京都産業保健総合支援センター ホームページ情報◇
2)厚生労働省 表示・通知義務対象物質が追加されます。
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◇ ストレスチェック制度における面接指導の進め方 ◇
産業医学相談員 森口 次郎
今年度、京都産業保健総合支援センターでは「ストレスチェック制度に
おける面接指導の進め方」 についての研修を実施しており、私も2回の研
修で講師を担当させていただきました。今回は研修で説明した面接指導の
留意点について簡単に述べたいと思います。
面接指導では、①「勤務の状況」(業務内容、繁閑の状況、残業時間な
ど)、②「心理的な負担の状況」(ストレスチェックのストレス反応の項
目を活用して、持続性や就業や生活への影響の有無、うつ病のスクリーニ
ング検査の実施など)、③「その他の心身の状況」(心理的な負担以外の
健康状況や生活状況)について確認してから、総合評価を行い労働者への
指導を行います。①「勤務の状況」は普段の職場巡視で作業環境などを確
認しておくとともに、面接指導に先立って人事・労務担当者や上司から面
接対象者の就労状況について情報を得ておくと効率的な面接につながりま
す。②「心理的な負担の状況」については、ストレスチェックの抑うつ症
状関連項目(「ゆううつだ」、「何をするのも面倒だ」、「物事に集中で
きない」、「気分が晴れない」、「仕事が手につかない」、「悲しいと感
じる」など)に注目し、 “いつもあった” 、 “しばしばあった” などにチ
ェックされている項目があれば、それが慢性的か、本人の悩みが強いか、
仕事や生活の支障が強いか、などを確認します。そしてうつ状態を疑う場
合は、うつ病の簡便な構造化面接法(厚生労働省『長時間労働者、高スト
レス者の面接指導に関する報告書・意見書作成マニュアル』
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/dl/151124-01.pdf
25ページ)を使用して専門医療機関受診の要否を判断するとよいでしょう。
また厚生労働省の『ストレスチェック制度実施マニュアル』
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150507-1.pdf
には「CES-Dなどのうつ病のスクリーニング検査を行うことも考えられる」
(69ページ)と記載されていますので、これらのツールから選択して使用す
ることが妥当だと考えます。
ここまでの確認を経て、総合評価と労働者への指導を行った後に、事業
者への意見具申として、「面接指導結果報告書」と「就業措置に係る意見
書」を作成します。睡眠や休養などの保健指導のみにとどまらず、就業制
限や配慮について記載する際、私は面接対象者の同意を得て上司や人事・
労務担当者に同席してもらい、最終案を確定する場合があります。これは
面接対象者個人の考えのみに偏らずにバランスのよい対応を行うためのも
のです。
ストレスチェック制度が導入されてから、「非精神科医が面接してもよ
いのか?」とのご心配を聞くことがありますが、面接指導では、精神科診
療での問診や精神疾患の診断、投薬治療の開始などは期待されておらず、
事業場の実態を知る産業医が、面接対象者の職場のストレス要因に対処し
たり、適切な職場環境調整や改善への意見を述べたりすることが主に期待
されています。産業医の先生方には、上記のマニュアルに定められた聴取
すべき項目を丁寧に確認し、必要な指導の上で報告書・意見書を作成して
いただくとよいと考えます。必要に応じた精神疾患の鑑別には、「うつ病
の簡便な構造化面接法」などのスクリーニングツールを使用することが推
奨されます。
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◇ ストレスチェック実施後のあれこれ ◇
メンタルヘルス対策促進員 武田 理栄子
昨年末12月からスタ―トした「ストレスチェック」が各事業所で実施が
されています。
ストレスチェックの実施は「プライバシー保護」の対策をあらゆる角度
から検証し、受検者に不利益が生じないように配慮を講じた制度としてス
タートしました。
ストレスチェックを実施されたある事業所では、結果を受け取った社員
が 「やっぱりストレスが高かった」 「自分では高ストレスと思っていた
が、判定はそうでもなかった」などストレスチェックが社内で話題になっ
ているとのことでした。ストレスチェック制度の目的のひとつは「ストレ
スの気づき」ですから、その点に関しては成果があったのではないでしょ
うか。
「高ストレスだったけど、面談は受けない」「質問項目が多くて(100
以上)類似の質問にどう答えたかわからなくなって正確に判定されている
のか」「質問の内容が読み取れなかったから判定が違っているような気が
する」など。また、中間管理職は「やはり高ストレスだった~。理由は思
いあたる」と、実施後の職場での会話がストレスに関してそれなりの盛り
上がりがあるようです。
一方、実施側では、業者に委託している場合でも、判定結果を返却する
際に、かなり気を使っているようです。高ストレス者に対して医師の面談
を勧める 「承諾書」 を同封すると高ストレス者だけが封筒が厚くなるの
で、全員の封筒の厚みを揃えるための工夫を講じたりしています。 また、
委託業者は、判定結果を解り易く、深刻感を出さないよう 「ウサギ、猫、
タヌキ、いのしし」など動物に例えたイラスト付きの文書も加えて「ライ
ト」な感じに仕上げているのもあります。
社内で比較的オープンに話題にしている様子は実施前には想像ができない
ことでした。
しかし、ストレスチェックはデリケートな内容を含んでいます。深刻な
高ストレスの判定を受け取った人もあるかもしれません。あえて受検しな
かった人たちもいます。職場のリーダーや管理者は実施後の職場の雰囲気
を観察しておくことも大切です。
集団分析については「どのように対策をとるか検討中」という事業所が
多い印象です。具体的な対策を講じるのはこれからですが、「どうしたら
いいのかわからない」という声も聞きます。
ストレスチェックが「働きやすい職場づくり」に役立つ制度として定着す
るには、具体的な方策が必要です。
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◇ストレスチェック制度について◇
*「こころの耳」に「ストレスチェック制度」についてまとめられて
います。
→http://kokoro.mhlw.go.jp/etc/kaiseianeihou.html
*ストレスチェック実施促進のための助成金について
助成金の登録・申請期間の延長になりました。→http://www.johas.go.jp/sangyouhoken/stresscheck/tabid/1005/Default.aspxl
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◆産業保健に関する各種研修会のお知らせ◆
https://www.kyotos.johas.go.jp/wp/training
※当センターが実施する「産業医研修会」について、付与できる単位は
「生涯研修」のみとなります。
「基礎研修」を受講される方は、京都府医師会主催の研修会をご覧
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