健康情報"ほっと一息"
治療と仕事を両立するための情報⑩ 復職後も治療を続けるには?
12月号では、休職した人が復職するまでの流れについてお話しました。
今月は復職した後の話です。
頻度は様々ですが、復職後も治療や検査など、病院に通う必要がある人は多いですね。そんな場合のために、「両立支援に関する休暇制度・勤務制度の整備」について考えてみましょう。
まず休暇制度についてです。
「複数の診療科を受診したり、検査があるので丸1日かかります。」という方がいる一方で「通院は必要だけど、丸1日休むのはもったいない。」という人もいます。そんな時のために「時間単位の年次有給休暇」や「半日単位の年次有給休暇」があると助かります。
労働基準法に基づく年次有給休暇は、1日単位で与えることが原則です。
しかし、時間単位の年次有給休暇は、労使協定を結べば、1時間単位で与えることが可能です(上限は1年で5日分まで)。
このほか、本来の1日単位での取得を阻害しない範囲で、就業規則等の定めによって、労働者の請求に応じて運用される場合は、年次有給休暇を半日単位で与えることもできます。「病気休暇制度」がある事業場もありますね。
病気休暇は労働基準法に定められた休暇ではなく、事業者が自主的に設ける休暇です。
入院治療や通院のために、年次有給休暇とは別に休暇を付与するものです。
対象疾病などの取得条件や取得中の処遇(賃金の支払いの有無等)は事業場の実情に合わせて決めたらよいでしょう。休暇制度の次は勤務制度です。
治療と仕事を両立する従業員にとっては、バスや電車、車通勤でもラッシュ時は身体への負担が大きくなります。「時差出勤制度」があれば、1日の勤務時間はそのままで、始業・終業の時刻を変更することで、身体に負担のかかる時間帯を避けて通勤することができます。
「短時間勤務制度」を導入している事業場もありますね。
内閣府による「がん対策に関する世論調査(平成28年)」では、「働くことが可能で、働く意欲のあるがん患者が働き続けるようにするためには、どういう取り組みが必要だと思いますか?」という質問に対して、最も多い52.6%の人が「病気の治療や通院のために短時間勤務が活用できること」と答えたそうです。
一定の期間を設けて短時間勤務から始めることができると、久しぶりのフルタイム勤務に不安がある場合など復帰しやすいですね。
今月は、「時間単位の年次有給休暇」「病気休暇」「時差出勤制度」「短時間勤務制度」など、両立支援のための制度(環境整備)について考えてみました。
制度の導入で気を付けることはありますか?
制度を導入し、活用することで、病気になった従業員の負担を軽減したり、治療を続けやすくすることはもちろん大事ですが、それによって周囲への負担が続くと全体が疲弊してしまいます。
制度の導入は「周囲への配慮」も併せて考えたいですね。
【参考文献】
- 厚生労働省 事業場における治療と仕事の両立支援ガイドライン(令和4年3月改訂版)https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000912019.pdf
- 内閣府 がん対策に関する世論調査(平成28年)https://survey.gov-online.go.jp/h28/h28-gantaisaku/index.html
- 近藤明美ほか 「がん治療と就労の両立支援 制度設計・運用・対応の実務」日本法令(2017年)