健康情報"ほっと一息"
治療と仕事を両立するための情報⑮ がん医療に関連する認知機能障害の特徴
先月は、がん患者さんが感じる認知機能の障害についてご紹介しました。
今月も、引き続き考えてみましょう。
京都大学医学部附属病院多職種連携研究会制作「仕事で、生活で、困っていませんか?~がん医療における認知機能への影響~」というリーフレットによると、
がんに伴う認知機能障害の多くは、次のような特徴があります。
(https://www.kyotos.johas.go.jp/wp/wp-content/uploads/2021/06/uk-book.pdf)
・症状が比較的軽度であるため、簡単な認知機能検査では正常範囲になることがあります。・物忘れ以外の症状(不注意が増える、集中力が続かない、作業に時間がかかるなど)が見られやすいです。・仕事や家事、勉強など、何らかの作業中に影響が出やすいです。・患者さんは困っているものの、自分自身に何が起きているのかわからず、様々なことがスムーズに行えないこと、家族や周囲の人から気づかれにくいことなどから、1人で悩みを抱え込み、心理的ストレスが増してしまうリスクがあります。・そのため、活動意欲が低下したり、対人接触、様々な社会活動への参加にも億劫になるなどの影響が出る可能性があります。要するに、仕事に影響しやすい症状ではありますが、比較的軽度なため簡易な認知機能検査などでは気づかれなかったりして、患者さんが1人で抱え込んでしまうことがあるのですね。
「1人で抱え込んでしまう」という問題については、こんな調査結果があります。
医療者401名に尋ねた調査で、患者さんが医療者に伝えている症状について、身体の問題(食欲不振、嘔気、倦怠感、痛み)、精神の問題(不安、抑うつ)と比べて、認知機能の問題(集中力低下、不注意、物忘れ)を回答した割合はかなり少ない結果となっていました。「がん治療とは関係ない」と思っているがん患者さんも多いかもしれませんね。
それと、がん患者さんは他にも困りごとが重なっていて、認知機能についての相談は後回しになっていることも考えられます。
相談を受ける側から、「こんな体験はありませんか?」と聞いてみるのも良いかもしれませんね。
また、他の相談で時間がいっぱいになってしまう場合は、リーフレットをお渡しすることもできます。
まずはがん医療における認知機能障害について、医療者、患者、職場にも広く知ってもらいたいですね
【引用文献】
- 京都大学医学部附属病院多職種連携研修会制作リーフレット 「仕事で、生活で、困っていませんか?~がん医療における認知機能への影響~」
https://www.kyotos.johas.go.jp/wp/wp-content/uploads/2021/06/uk-book.pdf
【参考文献】
- 谷向仁編著 「がんと認知機能障害 気づく,評価する,支援する」中外医学社(2020年)