産業保健コラム
山下 恵子
所属:K・ヤマシタカウンセリングルーム 代表
専門分野:看護師・シニア産業カウンセラー・公認心理師
私は森田療法の実践家!?
2024年6月3日
現在私はカウンセリングの中で森田療法を実施している。森田療法は精神科医森田正馬先生(慈恵医大初代精神科教授)が生み出した心理療法である。名前が何となく怪しい療法のように思われているようで、自分の周りの臨床心理士の先生方の中には「森田療法は効果がない」と言われる方もおられる。いずれにしてもなかなか日の目を見なかった心理療法なのであるが、昨今注目度が増しつつある。私はこの森田療法を基本に据えてカウンセリングをしている。森田療法の基本的な考えは「あるがまま」という考え方だがしばしば、これが誤解されている。
例えば、「不安」は認知行動療法的にはあってはいけないものとして取り扱い、不安を軽減することに尽力する。しかし、「森田療法」では「不安」はあって当たり前のものとして考える。そして悩める人は、あって当たり前の「不安」を取り除くこと(森田療法では「はからい」)に心を奪われ日常生活が止まってしまうのだ、と考える。そこであってあたり前の「不安」はそのままにして目の前にあることを精一杯やっていくように伝える。
そして森田療法は言葉のやり取りによる心理療法ではなく、「実践」していく事が大切である。その「実践」も単に行動するのではなく、その行動に心を砕き、「目的本位」に真剣に工夫し取り組んでいく事が求められる。
ある時、森田療法に詳しい先生と話をしていたら、その先生が「あなたは森田療法の実践家ですね」と言われたのである。私自身が日常生活の中で森田療法的行動を実践しているという意味のようである。それは「料理」の話だった。
料理作りが好きで、上手ではないが、毎食手作りで料理をしている。そして昨今の物価高もあって、なるべく食材を無駄にしないように工夫している、また献立も同じような味にならないよう考えている、冷蔵庫の中の野菜を絶対捨てない、
以上がその先生にお話していたことだが、それを聞いていて私の事を「森田療法の実践家」と言ってくださったのである。
私は森田療法の実践家として、カウンセリングの中でも来談者に森田療法の考え方や実践法を伝えていきたいと思っている。
山下 恵子