産業保健コラム
西野 智子
所属:社労士事務所TOMORROW
専門分野:社会保険労務士・産業カウンセラー
物流危機2024年問題
2023年9月1日
来年4月から自動車運転業務にも時間外労働の上限が適用されることになり、ドライバーの労働時間が短くなることで物流が停滞することが懸念されています。
何も対策を講じなければ、2024年に14%、2030年に34%の輸送不足が生じる可能性が試算されており、現在、生産性向上のための取組が進められています。
取組のひとつに、高速道路でのトラックの速度規制を現行の時速80㎞から引き上げる検討が進められています。同じ距離を今までより早く走ることにより時間が短縮できるというわけですが、大型車のスピードが速くなれば事故も増えますし、ドライバーにストレスがかかります。
また、大型トラックの後ろにトレーラーの荷台部分をつなげた「ダブル連結トラック」の導入が拡大しています。1人のドライバーが倍の荷物を運べるようになるわけですが、このダブル連結トラックは全長25mもあり、長い車両を運転するドライバーには大きなストレスを与えます。
一方で、ドライバーの負担になっているのが、「荷待ち(荷物を下ろすまで待機すること)」と「自主荷役(運んだ荷物を倉庫や棚に並べること)」です。荷待ちは2~3時間待たされることは当たり前で、自主荷役は欧米では別料金で請負いますが、日本ではドライバーがサービスで担う慣習となっており、長時間労働の一因になっているという現状があります。
時間外労働の上限適用の目的は、ドライバーの働き方を変えることです。働く時間を短くして、十分な賃金を保障するためには、業界の慣習である荷待ちや自主荷役の待遇改善も必要です。
私たち消費者の意識改革も必要です。
①再配達を減らすために、宅配ボックスを置いたり、受取スポットを利用すること ②急ぎでない場合は即日配送を避けること ③まとめて発注して配送回数を減らすこと
と小さなことですが、素早い流通のおかげで便利を得られるのは、ドライバーの長時間労働で成り立っていることを忘れないようにしなければいけません。
働き方改革が、ドライバーの量的・質的な負担軽減のもと進められることを望みます。
西野 智子