産業保健コラム

坂田 晃一


所属:トヨタバッテリー(株) 産業医

専門分野:産業医学

WEBを使った産業医活動を行って思ったこと

2022年1月4日

 産業医活動の中でWEB面接ということが既に当たり前のようになってきており、メリットやデメリットを感じつつ業務を行っているところだと思います。その中で私自身が強く感じたことは、産業保健分野の情報一元化管理が思った以上に遅れているということです。

 

 産業医面接の多くは、問診結果、健診結果、診断書などの情報を確認した上で実施することが大半です。実際にコロナ禍になってWEB面接を行う際に、健診結果は健診システム、面接記録や診断書等は個人ファイルとなっていることが多くみられました。ただ、この個人ファイルが曲者で、面接記録、各種問診票、個人的に受診した人間ドック結果、精密検査結果、診断書等がただ入っている状態のものも多く、種類別に時系列に並んでいるだけでも有難いという現状です。これが出務先の会社であれば、個人ファイルから事前に情報を確認してから頭の中で一元化(?)してから面接を行ったのですが、もし、自宅等でWEB面接を行うとした場合に、厚い個人ファイルが山積みで送られてくるとなると恐ろしいことだったと思われます。また面接後、今回自分が記録した面接結果が再び個人ファイルというブラックボックスに入ってしまうことになります。

 

 医療機関の大半が電子カルテ化(電子情報の一元化)がなされている時代に、産業保健領域ではその環境には程遠いという現実に直面しています。これは大企業であっても例外ではありません。多くの企業では何十年も前からの個人結果表などが部屋いっぱいに山積みされており、時々、ペーパーレス化という言葉は聞きますが、何らかの抵抗勢力により先延ばしになっているということがよく聞かれます。今、産業保健に入ってきている新人方は、電子カルテしか知らない世代です。その人たちがこの現状をみてどのように感じているのでしょうか。中堅からベテランといわれる産業保健職が今取り組むべき課題はここにあると思われます。

坂田 晃一