産業保健コラム
坂田 晃一
所属:トヨタバッテリー(株) 産業医
専門分野:産業医学
研修会講師をさせていただき感じたこと
2024年2月1日
産業保健総合支援センターから研修会の講師依頼を受けて、8年程経過します。それまでも中災防や大学などで行っていましたが、当センターからの依頼の研修は、受講者の大半が自分よりも先輩にあたる医師であり、産業保健の専門の立場で話をしなければならないと過度に考えてしまい、受講者目線というよりは自分が2時間話せる内容となっていました。考えたテーマは、研究を行っている「高齢者就労」、産業医として多く関わった「労働災害に関すること」でした。初回の作成には1カ月以上かかり、その後も数年同テーマで行いましたが、毎回、行政通達、最新データ等のリバイスを行い、自分なりに良いものが出来上がっているという自己満足だったと思います。ただ、一方通行の研修で段々面白みも感じられなくなってきた時に、研修終了時に質問をされる人が時々あるようになりました。内容としては「産業医にはどうしてなれるのか?(働き先の見つけ方?)」「〇〇と会社に言うけど聞いてくれないが、どうしたら良いのか?」などであり、私が話すテーマは「受講者のニーズに合ってないのではないか?」という疑問が出てきました。それ以後は、「産業医業務の実際」として、1つのテーマで話すというより、オムニバス的に複数の内容としました。また、知識を伝えるのみでなく、写真供覧での産業医巡視でのコメントの仕方、衛生委員会で話す内容を12か月分考えてもらうなどの参加型に近いものに変え、一方通行感は若干軽減していると思われます。
ここまでは医師向けの研修会についての所感を書きましたが、自分が産業医として勤務する企業での健康教育もコロナ流行を経て、大きく変わってきています。知識教育はE-ラーンニングや動画配信で行い、その後に集合教育でグループワークを中心に実践的な対応方法などを体験するようなものが当たり前になっています。医師によるグループワークはなかなかうまくいった経験が少ないのですが、企業の従業員はかなり教育慣れしており、うまい題材を準備することに苦労している現状です。
坂田 晃一