産業保健コラム
坂田 晃一
所属:トヨタバッテリー(株) 産業医
専門分野:産業医学
職場風土を考える
2018年2月1日
会社には独自の職場風土があり、同じ会社であっても事業所ごとに歴史、
製品の違い、土地柄なども加わり、全く異なる職場風土のことも多い。こ
の職場風土は多少勤務したくらいではわからず、一律の尺度で測定するこ
ともできない。産業保健スタッフはこの職場風土を感じながら事業所にあ
った活動を展開していくことが望まれているのであろう。
職場風土の表現として「人に厳しい会社」「人に優しい会社」といわれ
るものがある。あくまでも世間の噂であり、その基準は明確でない。
「人に厳しい会社」は、一般的に工数(人員)管理が厳しく、何事にも判
断を早く求めすぎる印象がある。「工数」というからには各人が同様だと
言っているものであり、「人それぞれ」という気持ちが強い産業保健スタ
ッフはやや違和感を持つ。ただ、教育制度の充実や昇進試験の平等性など
を重んじている印象がある。このような会社では、我々の活動も一見窮屈
そうではあるが、ある程度の判断基準は感じ取りやすい印象である。
「人に優しい会社」は、例えば復職時の就業上の配慮に関しても非常に
協力的であることが多いが、人に優しい(?)が故に時として、会社が優柔
不断な態度に思えることがある。特にメンタルヘルス事例の場合に多く、
上司及び人事部門が職制としての判断が曖昧で本人の言い分に引きずられ
過ぎて、労務管理を放棄しているのかと思われる事態も見られる。ここま
でなると職場のモラル低下が起こり、従業員は不平等感を抱いていること
が多いと予想される。
非常に極端な例を書いたが、このような会社に遭遇した時に産業保健ス
タッフはこの職場風土に合わせるだけで良いのであろうか。ではその職場
風土を変えていく手法を持ち合わせているのだろうか。風土であるので長
期戦は必至であり、まずは自分の配置転換(違う会社)が対処法となってしま
うのも残念である。
坂田 晃一