産業保健コラム

長井 苑子


所属:(公財)京都健康管理研究会 理事

専門分野:呼吸器内科・膠原病・サルコイドーシス・産業保健

酷暑の時期の業務と注意点

2016年9月1日

 今年の春から夏にかけての天候はじつに不安定でした。4月半ばに、ま
だ夜になると暖房が必要なこともありました。通常の年には、4月の花冷
えという寒さのときに、暖房までは使わないですんだものです。7月の酷
暑は、毎年、祇園祭りの古典的な最初の巡行がおわってからという覚悟で
のぞんでいたものです。今年は、7月にはいってすぐに、酷暑がおそって
きました。台風の発生もおそいけれど、一度発生すると、水害をもたらす
確率は増えているようにも思います。温帯ではなく、亜熱帯気候になって
いるのでしょうか?

 職場でも、この季節のひとつの問題は、冷房の温度です。個人差があっ
て、とてつもない低温でないと仕事の能率があがらないとして、21℃くら
いで部屋を維持している人がいます。一般には、26℃くらいにしてなんと
かしのいでいるのがふつうです。われわれのような医療機関では、患者さ
んの待合室の温度設定と風速、風量設定はむつかしいものがあります。高
齢女性の多くは寒がりますし、一方、男性のかなりは暑がります。診察室
にこられて、温度設定に留意してほしいと訴える人もおられます。診察室
もせまい部屋ですから、背後の上方に設置されている冷房からの冷気が、
われわれの足元に吹き降りて、足が冷えてしまうこともありますし、肩先
に冷気がふきつけて、これで風邪をひくこともあります。そこで、われわ
れは、サーキュレーターを設置して、冷気を攪拌して患者さんと診療者に
直接あたらないように工夫しています。小さな扇風機による別方向からの
攪拌も、風通しをよくしてリフレッシュ感を感じさせるよい方法です。診
察がたてこむと、医療者も水分をとりわすれて、一日の外来がおわるころ
に、急に全身倦怠感や筋力の脱力感をおぼえて、しまった、熱中症ではと
おもったことがありました。そこで、できるだけ水分をとることを忘れぬ
ように、さらには、OS1という補水液を準備していることもあります。

毎日の小さな工夫と留意によって、酷暑の時期にも、まちがいのない業
務ができるようにと心がけておきたいものです。

長井 苑子