産業保健コラム
森口 次郎
所属:(一財)京都工場保健会 産業医学研究所 所長
専門分野:産業医学・高血圧
新型コロナウイルスの対策について
2020年9月1日
新型コロナウイルス感染症に関して4月に発出された緊急事態宣言が5月下旬に解除されてから通常の事業を再開する事業場が増えて、産業医など産業保健スタッフに対して質問が寄せられることが増えているのではないかと思います。その中で、私は「マスクとフェイスシールドはどちらがよいか?」、「オフィスの仕切り板の高さはどれくらいがよいか?」などと細かい点についての質問が多い印象を持っています。仕切り板については、理化学研究所や神戸大などのチームが次世代スーパーコンピューター「富岳」を用いて、頭の高さまである仕切り板が望ましいことを報告していましたが、これも含めて現時点で医学的に根拠が明確に示されていないことが多く、産業保健スタッフとして回答に苦慮されることがあるのではないかと思います。
このような質問に対して、私は担当する事業場が該当する業種の「業種別ガイドライン」を参考に、広い対策を意識して助言するように努めています。例えば、事務職場では「オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」を参考に、①感染予防対策の体制づくり、②体調不良時の自宅待機ルール策定、③テレワークや時差出勤などの推進、④就業中の身体的距離(2mまたは1mとマスク着用など)の確保、⑤執務エリアのみならず休憩・休息スペースなどの清掃や換気の励行、⑥手洗いや消毒の励行、⑦部外者の事業場内立ち入りのルール策定、⑧感染者が確認された場合の対応の事前検討、など幅広い対策を講じて(あまり細かいことにこだわらず)リスク削減に努めるように助言しています。このガイドラインに沿っていれば、十分か否かも分かりませんが、細かい点に目が向きすぎて大きな抜け穴を作らない助けになるのではないかと考えています。
今後、再び緊急事態宣言が発出されれば、嘱託産業医など中小企業を支える産業保健スタッフの事業場訪問が困難となることが予想されます。しかし、中小企業等における産業医など産業保健スタッフの各種業務は、事業場における感染や重症化予防のために重要な役割を果たすものですので、オンライン会議システムを活用するなど、感染拡大防止に留意しながら、その機能をできる限り維持できるように準備しておいていただきたいと思います。それにより、事業場がこの危機を乗り切る助けとなることを期待しています。
業種別ガイドラインについて</p>
https://corona.go.jp/prevention/pdf/guideline.pdf
オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン
森口 次郎