産業保健コラム

須賀 英道


所属:龍谷大学 保健管理センター教授 センター長

専門分野:精神科診断学・メンタルヘルス教育

ミレニアム世代に見られるメンタル不調

2022年11月1日

 最近の若手はミレニアム世代と呼ばれる。幼少期からスマホが手元にあり、あらゆる情報がスマホから即時に得られる。例えば、算数問題にスマホをかざすと回答が出るのである。このことは身の回りに殆どの情報が揃っていることであり、生活の必要に関わらずアトランダムにある。半世紀までには暗黙の了解としてあった情報の優位性(絶対的価値観)がなくなり、その場での必要性(コンビニ感覚)が求められる。更に情報の真偽はかつてのように重視されず、今の自分に役に立つことが最優先となっている。こうした情報過多の環境では、多様性の評価が必然として生じ、マイノリティに対する評価もかつてのように排他的なものでなくなり、むしろ受容性が高められている。例えば、 性同一性障害もLGBTを経て今ではSOGI(Sexual Orientation and Gender Identity)としてその立場が評価されている。このことは障害者に対しても福祉視点から拡大し、発達障害に対する評価も疾患(disorder)から障害(disability)に移行し、今後の治療対象となるのは疾患ではなく症状となっていくことが予想される。

 こうした兆しを示す状況として、ミレニアム世代の精神科の外来受診の状況に垣間見うる。精神科の受診はかつてのスティグマが払拭されコンビニ感覚である。不眠や不安、やる気なさなどの相談で気軽に訪れる。今春に特に多かったのが、大学新卒の就職者が職場にうまく適応できず、不安やうつ状態となっている。そこには薬物療法や認知行動療法といった従来の精神科治療よりも、自宅安静療養によって改善している。すなわち環境変化であり、転職へのアシストが求められる。また、うつ状態で授業に出られないといって受診する大学生も大半はバイトができている。このことも環境適応性を示している。

 最近のメンタル不調も多くが軽症化し、個人の疾患治療よりむしろ、コンビニ的症状軽減や環境調整が求められる時代へと変わりつつあるのである。

須賀 英道