産業保健コラム
杉本 二郎
所属:杉本医院からすまメンタルクリニック 院長
専門分野:産業精神医学・精神科治療学・心身医学
コロナ禍での産業メンタルヘルス対策
2020年6月1日
新型コロナウィルス感染が世界的な規模で拡大しています。地球規模の自然災害に全人類が向き合わざるを得ない現実です。
政治経済分野はもとより、産業保健分野においても現在まで積み重ねてきた経済恐慌・災害時等の対策に加えて、長引くであろうコロナ渦中での対応、「コロナ後の世界」での対策が求められています。
こういった歴史の大きな変化の中で産業メンタルヘルス分野に求められるものも決して小さくありません。
失業率と自殺率の相関については過去に経験していますが、今回は予測できない程それぞれの数値が増加するものと思われます。事態が刻々と変化する中でのスピーディな対応が求められ、優先順位も常に念頭においておかねばなりません。
どこから手をつければいいのか判断できない状況に陥ることが予測されますが、それでも自殺対策で有効であったとされるセーフティーネット(ライフリンク)等を活用できればと思います。相談窓口を増やす、各種専門職間のネットワークづくり、情報の共有、行政や民間組織との協力や社会資源の活用、等々は今すぐにでも実行に移せるものです。メンタル不調者の背後にある問題を丁寧に聞き出して、それぞれの関係機関と連携しながら最善の方法を探っていく、といったきめ細かな作業が必要となります。
治療が優先される方がおられる一方で、経済的な支援や環境改善が急がれる事例が圧倒的に多くみられるものと思います。疾病性よりも事例性が大きく影響します。これにはラインケアの考え方が少し応用できるかもしれません。
コロナ禍で社会は今までとは全く違った様相を呈しています。「社会的距離」(ソーシャルディスタンス)やマスク、テレワークなどが当たり前となりました。緊急事態宣言が解除されても「社会的距離」は変わらない、変われば第二波が襲ってきます。
ハグや握手などのスキンシップをはじめ「コミュニケーション」に想像を超える変化が起こるのでしょうか?コロナ後の最大の課題かもしれません。
目には見えませんが対象が明確なコロナウィルスは「恐怖」という感情を起こさせ、コロナ渦中で世の中がどうなっていくのか見通しの立たない時の感情を「不安」と言います。
恐怖や不安が強まるとストレスが制御できなくなり、メディアが報じている諸々の心身の不調が生じます。また、不安・恐怖が差別・偏見や敵意・暴力を増幅させることも非常時にはよく見られます。
厚労省「こころの耳」にアクセスしてください。コンテンツを開いて「新型コロナウィルス感染症対策(こころのケア)」を閲覧する事をお勧めします。あなたとあなたのご家族が抱えている悩みを解決する糸口がきっと見つかると思います。
人に対する思いやりの気持ちを忘れないように、そして何よりもあなた自身が感染しないように、コロナ時代をしっかり生き抜いてください。
☆こころの耳 コロナウイルス感染症対策(こころのケア)
杉本 二郎