産業保健コラム
今坂 一郎
所属:
専門分野:シニア産業カウンセラー
健康であるということ
2015年6月1日
人が健康であることが、個人や企業組織さらには社会にとって重要な要素であることは、改めて取り上げることではないかも知れない。しかし、巷を眺めていると、健康であるということの本質が捉えられていないように感じる。
国連のWHO憲章前文の定義では、『健康とは、病気でないとか弱っていないということではなく、肉体的(フィジカル)にも、精神的(メンタル)にも、そして社会的(ソシアル ウエルビーング)にも、すべてが満たされた状態にあること』とされている。
(日本WHO協会訳)
このWHO憲章の健康定義の時に、肉体的、精神的、社会的に加えて、スピリチュアルを加えたらとの提案があったが、最終的に提案が不採択となったそうである。
これらの健康条件のうちの肉体的、精神的、社会的の3条件は、
①肉体的に満たされた状態:病がない、虚弱でないなど
②精神的に満たされた状態:不安がない、悩みがないなど
③社会的に満たされた状態:社会適応ができている、貧困や差別がないなど といえる。
不採択となったスピリチュアルは、日本ではメンタルと同じように精神的と訳されることが多いが、私はこれを霊性的と訳してみたい。霊性的と聞けば宗教的なものがイメージされるが、人間の心には神の啓示を受け取る性能が備わっており、人が答を見つけられない究極の状態に立ち尽くした時、この性能が働くようになる。この働きによって結果的にストレスが軽減するものと私は考えている。
人間尊厳にかかわるこの捉え方を敷衍すれば、
④霊性的(スピリチュアル)に満たされた状態:人間としての尊厳や生きがいを感じて生きている状態、
といえる。
肉体的、精神的、社会的という3条件にとどまらず、スピリチュアルまで一歩踏み込んで考えると、健康であることの本質がより明らかになる。ひいては働くうえでの健康もこれに尽きると考えている。
今坂 一郎