産業保健コラム
今坂 一郎
所属:
専門分野:シニア産業カウンセラー
こころのセルフケア
2016年10月3日
人間は最初に感じ、続いて思い、そして考える生きものといえます。つ
まり、感覚から始まって想起を経て思考するのが人間です。この過程にお
いて、こころに悩みが生じて苦しむような人生を歩む人が多い。
ここに述べることは、公益財団法人天風会で長年実践してきたヨガ哲学
に基づく心身統一道教義で学んだことのごく一部です。この教義は、中村
天風氏(明治4年~昭和43年)がヒマラヤ山麓での修行体験をもとに組織
創建されたものです。
教えの中では「思考は人生を創る」が力説されます。人生とは、生きて
いることを明確に意識する思考の一コマ一コマが継続したもので、思考の
量と質との両者が総合した現象と説かれます。怒りや怖れや悲しみなどの
消極的な観念を抱くと、 それがその人の人生生活の中で現実のものとな
る。逆にいえば、何事に対しても常に明るく朗らかに活き活きと勇ましく
応対して活きるのがよいとされます。
人間は、同時に二つのことを考えることができないという習性をもちま
す。この習性を活かしてこころの態度を積極的にすることを習慣づけるの
です。 そのため、 思いの源となる潜在意識を構成する観念要素なるもの
を、 事ある日常生活の中でいつも積極的なものに置きかえる訓練を続け
ます。
いま一つ大切なことを紹介します。それは外界からの感覚刺激を、肉体
に対して必要以上に過度に及ばせない方法です。これは「クンバハカ」と
いわれ、お尻の穴を閉める、丹田に気を込める、肩の力を抜く、これら三
つを同時に行う方法です。この態勢をとれば、外界刺激を肉体に伝える働
きをもつ神経系統が正常に働き、結果として五臓六腑などの肉体器官に与
える影響がほどよくなり、身体の健康が保てることになります。
常々、多くの人々にこのようなセルフケアの実践を奨めたいと思ってい
ます。
今坂 一郎