産業保健コラム

今坂 一郎


所属:

専門分野:シニア産業カウンセラー

信頼関係が築けていない日本社会

2019年2月1日

 最近の日本社会ではマスメディアによる不祥事報道が目立ちます。
大企業の営みや政府の政策決定などにおいて、あたかも不祥事があるのが
当たり前であるかのようにも見受けられます。

 不正らしきものが発覚した時、そのつど当事者は決まったように「再発
防止に努めます」と発言し、深く頭を下げる姿が報道されます。しかも
その再発防止の対処策をしばしば第三者委員会に任せるなど、当事者自身
が自ら問題を是正しようとする意志を放棄しているかにも見えます。

 

 なぜこうした事態が続くのかが不思議です。その理由や原因を考える
こと自体が過分なことであるとは思います。複雑な社会における営みが
積み重なった結果だから、仕方がないとする考え方もあるでしょう。
しかしそうした考え方には納得できず、気持ちがすっきりしません。

 産業カウンセラーとしてカウンセリングなるものを学び続ける中で、
その原因として一つの考えに思い至りました。それは社会を構成する人間
相互の信頼関係の欠如が原因であるということです。

 

 ひとことで信頼といっても、その中身は複雑であって信頼関係を築く
ことは容易でありません。信頼の反対は不信といえます。不信感を抱き
ながらの会話や対話では、心の通じ合う深さは浅いままで終ります。本音
あるいは本当のことが共有される信頼関係を築くことが望まれます。

 

 本音はどのような時に出てくるのでしょうか。昔ある敬愛する方から
「相手を怒らせると本音が出てくるよ」と聞いたことがあります。つまり
本音による論争が必要ということです。建前に終始する論争ではなく、
本音で語り合う論争があれば、より良好な信頼関係が産まれる可能性が
あります。これはいわゆる二律背反の原理といえます。

 常日頃から少しでもより良い日本社会を築くために、良好な信頼関係を
いかにして創るかについて考えています。

今坂 一郎