産業保健コラム

武田 理栄子


所属:

専門分野:シニア産業カウンセラー・キャリアコンサルタント・心理相談員

「挨拶」は最初のコミュニケーション

2014年4月1日

 新入社員はまず「挨拶」が大切と教えられています。最初の挨拶は第一印象を決める重要なことがらです。また、元気のよい、明るい挨拶は周囲の人たちに仕事への意欲を感じさせます。
 ベテラン達はどうでしょうか・・・。ベテランの中に「挨拶」を欠かす人がいます。
挨拶は最初のコミュニケーションです。そしてビジネスマナーの基本です。挨拶を返さない人がいると職場のモチベーションにも影響します。そのくらい挨拶は人のこころにデリケートに影響するのです。

 私は自衛隊のカウンセラーをするようになって数年経ちます。号令や掛け声が習慣の自衛隊の中にも挨拶をしない人がいるのです。そして、屈強な自衛官も「メンタル不調」に陥ります。自衛官も一般の会社員同様、上司との関係がうまく行かずに不調になってしまうケースが多いのです。怖い上司、威圧的な上司、そんな上司は自衛隊にはたくさんいます。また命令で動く組織ですから「やさしく」とか「丁寧に」の配慮は基本的に少ないのです。指示のとおりに素早く、行動することが求められる職務なのです。
 信念を持った自衛官は、行動が甘い部下を叱り飛ばし、号令をかけます。叱咤激励もします。自分が理想とする強い信念に満ちた行動で教育的指導を行います。パワハラと紙一重なのです。「パワハラだ」といわれて混乱が起こり、そこから不調になってしまったケースもあります。なんとも悩ましい職業です。また自衛官は、転勤は慣れっこですから転任地への適応は早いのですが、業務経験のない仕事への異動はなかなかにストレスが高いようです。自衛隊員は災害派遣や海外派遣で活躍するイメージが先行していて、困難に打ち勝ち、前進するイメージが強いのですが、自衛官も職場の人間関係に悩む人が多いのです。世の中の流れや意識の変化とともに自衛官自身が以前ほど「こころの相談」をすることの抵抗を持たなくなってきたように感じます。

 どの業界であっても、職場の人間関係の悩みは働く上では大きなウエイトを占めています。新入社員が元気よく挨拶をする職場は明るく期待に満ちています。ベテラン社員も挨拶を忘れず、最初のコミュニケーションを大事にして、良い職場作りを進めていただくことと若い人を育てる気風を培っていただきたいと願っています。
 不調な時には誰かに心の内を打ち明けて、「こころの荷」を軽くしてみるのが良い療法です。こころの孤立を防ぐことができます。

武田 理栄子