産業保健コラム

武田 理栄子


所属:

専門分野:シニア産業カウンセラー・キャリアコンサルタント・心理相談員

ドイツ人作家ケラーマンが見た宮津

2025年3月3日

 京都府北部の宮津は「天の橋立」の美しい松林が有名で、 最近は外国の方に人気の景勝地です。
 100年前の明治の終わりの頃にも、宮津を愛したドイツ人作家がいます。パリ万博で見たきらびやかで繊細な日本に魅了されたドイツ人作家ケラーマンは30歳、スイス人画家を伴い日本各地を巡りました。日本滞在で最も心惹かれた場所が宮津で、真の日本を感じた場所だったそうです。ケラーマンは宮津の荒木別荘(現よさの荘)に1ヶ月滞在しました。帰国後「日本散策」と「さっさよやっさ」を出版しました。その一部を紹介します。

 

 荒木別荘からの展望は青い海、香りよい湿った外気、夕暮れは美しく、遠くの入り江は波が光って灯りも見えている、その灯りに誘われて船で花街に繰り出した。船は小さいけれど、畳が敷いてあり火鉢があり茶器、座布団まで備えてあり心地良い。船の灯り(提灯)は紙でできている。驚きである。宿では小柄な女中さんがちょこまかと出入りし、座布団を並べ、低い腰かけを用意してくれた。それは肘置きで椅子では無かった。部屋はすべてが磨き込まれ、誰も入ったことがないかのようであった。二つの部屋を開け放し、広々とした部屋にしつらえ20センチばかりの高さの漆塗りのテーブル(お膳?)の上にお酒が入った壺(徳利?)、大小の盃、リンゴやみかん、卵、煙草盆に火鉢、炭を入れる籠など、こまごまと運び終わるとまた誰も居なくなる。すべてがリズミカルである。天秤棒で「風鈴~風鈴」と唄いながらモノを売る。日本人はなんでも踊りや唄にする。やっとやってきた踊り子はひたいを畳にこすりつけんばかりに挨拶をする。日本人はとても丁寧な挨拶をする。言葉は通じ合わないが踊り子と目が合うとウンウンとうなづいてくれ、心でもてなしてくれた。請求書は2,3日後に「巻き物」で届く。とてもユニークで楽しく思えたが、お金が溶けるように無くなった。

 

 海辺の町の美しい景色と人々の素朴な心暖かさ、忘れられない宮津だったそうです。当たり前と思っていることを外国の人が驚いたり、称賛されるとなんだか誇らしく嬉しい。
 北部の工業団地には外国の労働者も増えています。イスラム教のお祈りのスペースを設けた会社があります。細やかな配慮で、働く環境整備が進んでいます。

武田 理栄子