産業保健コラム

花谷 和雄


所属:花谷社会保険労務士事務所

専門分野:社会保険労務士・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

ゲーム依存世代へのメンタルヘルス対策

2020年4月1日

私が加入している「公益財団法人日本精神衛生会」という団体から送られてきた機関誌に「21世紀のメンタルヘルス」という特集が組まれていました。興味を惹かれる記事ばかりでしたがその中で特に「インターネット依存に関連したコミュニケーションの問題」という論文に関心を持ちました。しかも執筆陣がKASTで知られる久里浜医療センターの先生方でこのセンターは、依存症について高いレベルで研究されていることに今更ながら驚きました。
先ず、簡単なスクリーニングテストがあったので転載します。

 

表I Diagnostic Questionnaireの邦訳版
 1.あなたはインターネットに夢中になっていると感じていますか?
  (たとえば、前回にネットでしたことを考えたり、次回ネットをするこ
   とを待ち望んでいたり、など)
 2.あなたは、満足をえるために、ネットを使う時間をだんだん長くして
   いかねばならないと感じていますか?
 3.あなたは、ネット使用を制限したり、時間を減らしたり、完全に
   やめようとしたが、うまくいかなかったことがたびたびありました 
   か?
 4.ネットの使用時間を短くしたり、完全にやめようとした時、落ち着か
   なかったり、不機嫌や落ち込み、またはイライラなどを感じますか?
 5.あなたは、使い初めに意図したよりも長い時間オンラインの状態でい
   ますか?
 6.あなたは、ネットのために大切な人間関係、学校のことや、部活の
   ことを台無しにしたり、あやうくするようなことがありましたか?
 7.あなたは、ネットヘの熱中のしすぎをかくすために、家族、学校の
   先生やその他の人たちにうそをついたことがありますか?
 8.あなたは、問題から逃げるために、または、絶望的な気持ち、罪悪
     感、不安、落ち込みなどといったいやな気持から逃げるために、
     ネットを使いますか?
評価方法,5項目以上該当すれば「インターネット依存の疑い」とする。
引用:公益財団法人日本精神衛生会刊「21世紀のメンタルヘルス」P81より

 

このテスト、「どちらかと言えば」と言う文言を加えると私の場合ほぼ依存症であることになり改めてえらいこっちゃと思い始めています。
また、昨年開催された世界保健総会で「ゲーム障害」がICD‐11に収載されることも決まったようでこれからますますネット依存の人口の増加が見込まれており国も早々に対策を開始しているようです。
ネットにのめり込む人たちの中に発達障害や合併精神障害を持つ人が見受けられるそうです。これらの特性を持つ人たちは、煩わしい人間関係から逃れられるネットの世界に流れ込んでくることが多いようです。そうしてますます現実社会から遠のいてしまうと考えられます。
社会の問題として捉えてみると薬物と変わらないくらい重篤でその対策は困難なものがあるように感じています。統計的な数字は割愛しますがネット使用開始の低年齢化も顕著であり早期のトータル的なネットに関する教育の必要性を感じています。
私は、メンタルヘルス対策促進員をして成人を対象に活動していますがこれから所謂ゲーム世代が勤労者として社会に参入してくるわけでそういった世代にどう対応するかはこれからの大きな社会的課題だと考えています。
【注釈】
KAST:久里浜式アルコール症スクリーニングテスト
ICD-11:WHOが作成する国際疾病分類の第11回改訂版

花谷 和雄

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