産業保健コラム

花谷 和雄


所属:花谷社会保険労務士事務所

専門分野:社会保険労務士・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

コロナ禍での働き方の変化の小さな出来事

2021年5月6日

コロナの蔓延が止まりません。今日のニュースでは、3回目の緊急事態宣言が検討されていると報じています。
このような情勢下でも社会は動き続けていますし、人は働き続けています。
そして、その働き方に大きな変化が生じ始めています。
その一つが「三密」を避けるために会社に行かず「在宅勤務」をするということです。
「在宅勤務」という働き方は、数十年前から推奨され、私も会社に勤務していた頃に「在宅」で仕事をしてもらったことがありますが当時は、「在宅さん」と称してあくまでアルバイトの延長といった感じでした。会社に出勤して他の社員と交流しながら会社の中で働くことが仕事だ、常時出社しない人を正社員には出来ないと言う考え方が主流だったからです。
しかし、コロナ禍はその考え方を根本から覆しました。アルバイトの延長としての「在宅勤務」ではなく正社員が「在宅勤務」をするようになったのです。通信技術の発達でZoomに代表される双方向の所謂テレビ電話が手軽に利用出来ることと相俟って幅広く実施されるようになってきました。そして今や「在宅勤務」とは言わず「テレワーク」と称されるようになりました。当初は、管理職の目が届かないので労務管理が可能かと言う議論もありましたが実施してみるとそのような心配もあまり見られない上に通勤が不要になる等のプラス面が多く、勿論全ての職種でテレワークが可能なわけではありませんが逆にどう広げるかを模索している様子もうかがえます。
このような状況下で最近印象に残った会話があります。私の知り合いの若い正社員と話をしていた時です。彼はこう言いました。「テレワークで出社時と同じだけ成果を上げていて上司も認めてくれている。しかし、テレワークだと会社にいる時よりも早く仕事を終えられ時間に余裕が出来る。不思議な気がする。」と話してくれたのです。
この話、私にとっては不思議でも何でありません。
長い会社生活の経験では、会社に出勤して仕事をすると本来業務以外に時間をとられることが意外と多いのです。会社にいるがための余分な業務をそぎ落とせば当然時間は余るはずです。勿論会社の中での本来業務以外の所謂雑務が全く無駄とは言いませんが会社にいる時間全部を使って本来業務をしている訳ではないと言うのが日本の現状で、この現状に慣れ切っていると本来業務とその他の時間との区分がつきにくいのだと思われます。
このことは、生産性にも大いに関連することだと考えています。
紙面の都合でこれ以上深掘りはしませんが働き方一つにしても今回のコロナ禍によって従来の思考回路では、考えられない事象が発生するだろうなと思いを巡らせているところです。

花谷 和雄