産業保健コラム

花谷 和雄


所属:花谷社会保険労務士事務所

専門分野:社会保険労務士・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

カウンセラーとして活動する中で

2017年12月1日

 カウンセラーとして活動してもう20年近くになりました。
 幸いというかカウンセラーとして相談室に定期的に入ることが出来、多
くのセッションを経験することが出来ました。カウンセラーとしては、大
変幸運であったと感じるとともにカウンセリングの難しさも経験しました
そして、今強く感じるのは、クライエントに鍛えられたという想いです。
つまり、いま私が曲がりなりにもカウンセラーと名乗れるのはいままで接
してきたクライエントのお陰と思えるのです。

 思い返してみるとまだカウンセラーとして未熟な初期には、妙な力が入
ってクライエントの課題に対して「何とかしたい、何とかしてあげたい」
という気持ちが強く、つい解決に走ってしまうことが多くあったように思
います。私は、技法として来談者中心療法を基礎としていますから基本の
構えは、「クライエントは、自ら自分の問題を自分で解決する力をもって
いることを前提とする」という姿勢です。その力をクライエントが発揮出
来るように主にクライエントの話すことを「傾聴」しながらクライエント
の気付きを促すわけですがやってみるとなかなかすんなりといきません。
焦りもあり、カウンセラーとしての本分を忘れて課題解決に走ってしまっ
たことを今は、恥ずかしく思うのですがその時点では、自分なりに真剣に
取り組んでいました。

 そんな中私の考え方に決定的な変化をもたらした出来事がありました
Aさんと言うクライエントには、ある心理療法が向くと判断し、Aさんと
も相談して他の心理療法機関を紹介したのですが結局私の相談室に戻って
こられることがありました。そのクライエントの言葉によると「あんな事
出来るわけがないでしょう。出来るのだったらとっくに楽になっています
よ。それよりここで話をしているときが一番落ち着くのでここに通わせて
下さい。」と言うことでした。
 この言葉にハッとさせられて、クライエントが求めているのは単に課題
解決だけではなくほっと出来る場を相談室に求めていることも多くあると
いうことに気づきました。

 それからは、自分の力量の範囲の中でクライエントに寄り添うことを私
のスタイルにすることを改めて決心しました。
そうすると勿論いつも上手く運ぶとは限りませんが肩の力が抜けて本当に
自己一致した構えでクライエントに接することが出来るようになってきま
した。まだまだ力不足ですがこれからも「身の丈に合った」カウンセリン
グを心がけて行きたいと考えています。

花谷 和雄