産業保健コラム
三岡 千賀子
所属:三岡千賀子社会保険労務士事務所
専門分野:特定社会保険労務士・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
メンタルヘルス対策促進員より
2014年7月1日
内閣府の調査によると、「ワークライフバランス(WLB)」という言葉について、言葉を聞いたことがある人の割合は5割ですが、言葉も内容も知っている人は約2割と、いまだ十分に知られていないことがわかりました。
仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章では、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」が、WLBが実現した社会としています。
WLBが注目される背景には、少子化への危機感や人材確保への対応策、企業の経営戦略等がありますが、労働を取巻く環境は厳しく、正規社員以外の労働者の増加、長時間労働により心身の健康を害する人や仕事と子育て・介護の両立など、仕事と生活の間で問題を抱える人が増加しているのが現状です。
女性の社会参加は、1986年男女雇用機会均等法の施行により大きく進み、1997年以降は共働き世帯数が男性雇用者と無業の妻から成る片働き世帯数を上回って年々増加しています。日本では、夫が家事・育児に費やす時間は他の先進国と比較するとかなり低く、共働き世帯の育児負担割合は、ほとんど妻あるいはどちらかというと妻が育児を負担している割合が7割を超えており、子育て世代の男性の長時間労働との関係が指摘されています。
このように女性の社会参加が進み労働を取巻く環境が変化する中、働き方の見直しが求められますが、職場や家庭、地域に残る「固定的役割分担意識(夫は外で働き、妻は家を守るべきである)」も影響を与えているようです。
医療分野においても、人口減少、職業意識の変化、医療ニーズの多様化、医師等の偏在などを背景として医療スタッフの確保が困難な状況が生じており、私たちが将来にわたり質の高い医療サービスを受けるためには、医療分野の勤務環境を改善し、人材の定着・育成を図ることが不可欠です。特に、心身の緊張を伴う長時間労働、当直、夜勤・交替制勤務など厳しい勤務環境にある医療スタッフが健康で安心して働くことができる環境整備は喫緊の課題となっています。
厚生労働省では、医療機関等の「雇用の質」向上を図るために、各都道府県に「医療勤務環境改善支援センター」を設置することを決定、京都府では、支援センター事業の開始に先立ち、平成26年4月から京都府社会保険労務会に「京都医療労務管理相談コーナー」を設置し、医療従事者の勤務条件改善に向けた支援を開始しています。
企業がWLBに取り組むメリットの一つに、従業員の心身の健康の保持増進があります。WLBの一環としても、産業保健総合支援センターをぜひご活用ください。
三岡 千賀子