産業保健コラム
三岡 千賀子
所属:三岡千賀子社会保険労務士事務所
専門分野:特定社会保険労務士・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
更年期障害!?
2020年9月1日
先日、「更年期障害」をテーマにした健康番組が放送されていました。
女性の更年期は、閉経をはさんだ前後5年、45歳~55歳の頃。番組の冒頭では、いま55歳の人が21歳のときに男女雇用機会均等法が施行(1986年)され、更年期世代のほとんどがこれ以降に社会に出たこと、45~54歳女性の労働力率は約8割、また、アンケート調査の結果として、更年期障害の症状を理由に昇進を辞退したことがある(50.0%)、辞退しようと考えたことがある(17.3%)を合わせて約7割が昇進に後ろ向きであることが紹介されました。女性管理職を増やすことは国の課題であり、この状況は大きな損失であること、必ず終わりが来る更年期障害が理由で仕事を辞めたり、キャリアアップを諦めたりすることはもったいないと伝えていたことに興味を持ちました。
女性の更年期障害は「主観的な病気」で、症状がつらくて日常生活に支障をきたす状態が更年期障害だそうです。
更年期障害の症状は、のぼせ、ほてり、発汗/冷え/だるい、疲れやすい/眠れない/クヨクヨ・憂うつ/頭痛・動悸/肩こり・関節痛/めまい・耳鳴り/物忘れ、記憶力の低下/膣の乾燥、性交痛など。
間違われやすい病気は、甲状腺の病気(バセドウ病・橋本病)/うつ/関節リウマチなど膠原病/メニエール病/貧血/五十肩など。
女性の更年期症状の要因は、女性ホルモン(エストロゲン)の減少・ゆらぎ、なりやすい性格(完璧主義、責任感が強いなど)、環境のストレス(育児・介護+仕事のストレス、環境の変化など)。
エストロゲンのゆらぎを小さくするためには、栄養バランス、運動、睡眠に注意し、自分のための「ホッとする」「楽しめる」時間をつくること、アンチエイジングより「ウェルエイジング」で上手に年齢を重ねることが大事。我慢せず、つらい時には専門家を頼ること。まずは、婦人科に相談。女性ヘルスケアに特化した日本女性医学学会認定「女性ヘルスケア専門医」が紹介されていました。
一方、「疲れがとれない」「意欲がわかない」などの症状があらわれる男性の更年期障害は、男性ホルモン(テストステロン)の低下によるため、40歳代以降いつの年代でも起こりうるそうです。テストステロンは「社会性ホルモン」とも呼ばれていて、年齢よりも生活習慣や社会との関わりが深く影響し、自己実現や社会での評価や貢献度でもテストステロンの値は変わり、かなり個人差があると伝えていました。
テストステロンの低下による症状は、
身体の症状:筋力低下、関節痛、筋肉痛、異常発汗、ほてり、肥満、頻尿など。女性の更年期障害と似た症状や、男性特有の症状(性欲の減退など)。
心の症状:健康感の減少(毎日調子がちょっと悪いなぁといった感じ)/興味や意欲の喪失/眠れない/不安、うつ症状/集中力・記憶力の低下など。
テストステロンの低下を放置していると、病気のリスクが高くなり、
中性脂肪やコレステロールの代謝悪化、内臓脂肪や皮下脂肪が増えることによる肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧、動脈硬化。
血液の流れを良くする働きや記憶をつかさどる脳の海馬を活性化する働きの低下による心筋梗塞、狭心症、脳卒中、認知症。
相談できる診療科は、泌尿器科。メンズヘルス外来、男性更年期外来など。
(NHKきょうの健康「更年期対策」より)
そういえば、数年前の当センター事例検討会では、うつ病と思っていたら更年期障害だったという事例がありました。
うつ病も更年期障害も、専門医を受診することに「抵抗がある」ことがあるかもしれません。
メンタルヘルス不調者への声かけにおいては、「かかりつけ医」に繋ぐことをすすめることがあります。「健康に関することを何でも相談でき、必要な時は専門の医療機関を紹介してくれる身近にいて頼りになる医師」(日本医師会)がいると心強いですね。
三岡 千賀子