産業保健コラム
三岡 千賀子
所属:三岡千賀子社会保険労務士事務所
専門分野:特定社会保険労務士・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
ハラスメント規制法成立~パワハラ防止対策が法制化~
2019年7月1日
職場のパワーハラスメント防止策を企業に義務付ける労働施策総合推進
法等の改正法が5月29日に成立、パワハラやセクハラ、マタニティハラス
メントに関して「行ってはならない」と明記されました。
※防止措置義務:セクハラは2007年「男女雇用機会均等法」、マタハラは
2017年「男女雇用機会均等法」「育児・介護休業法」に規定。
セクハラを理由とした日本初の民事裁判が起こされ、「セクシャル・ハ
ラスメント」が新語・流行語大賞の新語部門金賞に選ばれたのが1989年
(平成元年)、平成最後の新語・流行語大賞トップテンには「♯Me too」
が選ばれました。
昨年5月、ハラスメント等を理由に企業が従業員から訴えられた場合に
備える保険の販売件数が急増しているとの新聞記事がありましたが、2006
年に労働審判制度が導入されて以降、ハラスメント関連の訴訟は増加して
います。
個別労働紛争解決制度を利用した総合労働相談では、「いじめ・嫌がら
せ」の相談件数は72,067件(23.6%)で6年連続トップ(平成29年度施行
状況)。
私自身、ハラスメントに関する相談が増えたことを実感しています。
●ハラスメント対策の強化のポイント●
・パワハラ:初めて事業主に防止の取り組みを義務化。(具体的内容は
年内に出される指針で規定。)改善指導に従わない場合、企業名公表。
定義①優越的な関係を背景に②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
により③就業環境を害する―の三要件。
・パワハラ・セクハラ・マタハラ:被害を相談した労働者への解雇など不
利益な取り扱いを禁止。国・事業主・労働者に対し、他の労働者の言動
に注意を払う責務を規定。
・社外でのセクハラ:加害者側の事業主に対し、被害者側の事業主からの
事実確認などの協力要請に応じる努力義務。
・顧客からのカスタマーズハラスメントや就活生へのセクハラに対して、
指針で対応を検討。
※大企業は2020年4月、中小企業は2022年4月から義務化。
罰則を伴う禁止規定はなく、一人ひとりの意識を高めていくことが求め
られています。
なお、6月10日から開かれた国際労働機関(ILO)年次総会では、職場
でのセクハラや暴力を禁止する初めての国際条約が採択されました。
*こころの耳 http://kokoro.mhlw.go.jp/power-harassment/
*あかるい職場応援団 http://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/
*『職場のパワーハラスメントに関するヒアリング調査結果』
(独)労働政策研究・研修機構
https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2019/216.html
*当センターでは、随時研修・セミナーを実施しております。
三岡 千賀子