産業保健コラム
辰巳 朋子
所属:田辺三菱製薬労働組合契約公認心理師・臨床心理士
専門分野:臨床心理学・産業カウンセリング
これって惨事ストレス!?
2021年6月1日
コロナ禍で、日本中が災害現場のようです。原稿を書いているのは5月17日。感染対策の中でエッセンシャルワーカーという用語を学んだり、医療現場や感染症対応窓口等での過酷な勤務状態が続いていることを見聞きするにつけ、それぞれの働く現場に「惨事ストレス」と呼んでもいいような事態が起こっていると感じられます。
「惨事ストレス」というのは、凄惨な災害現場のような、逃げたり避けたりできない状況で強いストレスやショックを受け続けることを言い、消防署員等の救援する職種ではサポート対応がすでに取り組まれています。現在のような感染症対応が続く事態では、もっと幅広い職種であたかも災害現場のように、長時間労働やきつい判断、クレーム対応等が続いていませんか。何より、そこで働く人に以下のような症状が現れてきます。
細かなミスが多くなる、眠れない、逆に過敏になる、無力感、怒り、罪責感、あるいは現実のことと思えないような感情のマヒ…これらは、異常な事態に対応しようとするヒトの正常な反応ですが、長期間その状態が続くと心配です。個人の努力では休めなくなってしまい、ひどくなるとうつ状態やPTSDと呼ばれる症状につながるのです。
ご本人にできることは、体を休めることを優先して、できればきつい仕事を一時的に離れて日常を取り戻したり、安心できる人に想いを聴いてもらったり、気分転換をするのがお勧めです。職場にできることは、ねぎらいを伝えたり、休暇を保証することでしょう。
燃え尽きてしまうことや仕事を止めるしかないと思い込むことは避けたいですね。仲間が辛くなっているのを感じ取ると、私たちは自分も落ち着かなくなってしまい、職場の雰囲気がピリピリしていきます。無理を続けてしまわないようにしましょう。免疫を下げずに健やかに働きたいですね。お元気で!
辰巳 朋子