産業保健コラム

辰巳 朋子


所属:田辺三菱製薬労働組合契約公認心理師・臨床心理士

専門分野:臨床心理学・産業カウンセリング

からだの感じと感情

2017年7月3日

 冷たい飲み物がのどを通りすぎ、胸の中にふわっと広がる感覚が、心地
良い季節になりました。今回は、からだの中のこの「身体感覚」と「感
情」のお話をご紹介して、自分の感情をうまくコントロールできたらな、
と思い惑うひと時に、一服の風を送ることが出来ればと思います。
 そもそも、自分が喜んでいる時、それをあなたはどのようにして知りま
すか?。怒っている時はいかがでしょうか。たいていの方は考えを思いめ
ぐらして、あの人が何々したからだとか、あんなことを言われたからだと
いうように原因を探ります。

 ところが、今ここでの自分の身体の中に注意を向けることが出来るよう
になると、「胸がふくらむような」とか「胃がきゅっと縮まるような」と
か、まさに「はらわたが煮えくりかえる」などという表現がなされるよう
になります。私たちが使っている日本語には、感情を示す身体表現がたく
さんありますね。からだの感覚のすぐ隣に、感情・気持ちがあるのです。

 お気づきでしょうか。ここで言っているからだの感覚というのは、視覚
や聴覚、味や匂い、触った感じなどの、私達が外側の世界からの情報を取
り入れている感覚器官だけではありません。筋肉や関節、内臓など、から
だの内側からも、多くの多彩な感覚を、私達は受け取っているのです。

 よかったら、ちょっとご自分にたずねてみてください。この瞬間、自分
はどんなふうに、いま生きている状況を感じているのだろうかと・・・。
自分の内側に注意を向けます・・・息と共に、体が膨らんだりしぼんだり
しているのがわかりますか・・・手のひらで、自分の身体にふれていると
あったかくなってきませんか・・・歯をくいしばった名残が頬に残ってい
たりしませんか・・・言いかけて飲み込んだ固まりが胸に残って・・・。

 そして、感じられた身体からの合図は、いま自分がどんなことを感じて
いるかだけではなく、これから何をしたらいいのかとか、何がたりないの
か等ということまでも、教えてくれると言われています。マインドフルネ
スやフォーカシングなど、体の感覚に注目する技法が、心理療法の中で培
われています。

 みなさま、カウンセラーと話してみませんか。

辰巳 朋子