産業保健コラム
村田 理絵
所属:(一財)京都工場保健会 診療部 健康管理課 課長
専門分野:産業保健・保健指導
産業カウンセリングの現場から
2015年5月1日
2015年度は「マイナンバー制度」と並び、企業にとって重要法律といえる「改正労働安全衛生法(ストレスチェック義務化法案)」に向けて準備をされていることと思います。4月に厚生労働省より「ストレスチェック制度」に関する省令、告示、指針が公表されています。
(厚労省ホームページhttp://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000082587.html)
そこで今回は、毎年3月に実施している産業保健スタッフ活動報告のテーマを、産業保健スタッフが感心の高い“企業におけるメンタルヘルス対策の取組み”として行いましたので一部お伝え致します。今年も約30名の産業保健スタッフの方に参加して頂きました。
最初に、A社保健師よりメンタル不調による休業者が年々増加していたことから、その現状分析と予防対策に関する取組みについて紹介頂きました。“メンタル不調の予防策”を講じることは全社的に重点課題ととらえ、新入社員、管理職等に対するメンタルヘルス教育・研修の徹底、ストレス調査の実施と活用、保健師による全社員に対する面談等の様々な取組みをした結果、メンタル不調による休業者が減少した旨の報告を頂きました。現状分析に対する予防対策の効果を数値化し、職制に分かりやすく訴えることで職制のメンタルヘルス対策に対する理解と産業看護職への厚い信頼を得ることにつながり、次の課題を見出し今後の活動のエネルギーにしていることを感じました。
次に、B社保健師より、業務内容、勤務地の変更等によるメンタル不調が相次
いだ事例に対する取組みについて紹介頂きました。その事例に対し、管理監督者に向けた研修、異動者全員に対する保健師面談、すぐに保健師に相談しやすい体制づくり、社員が主体となって職場体操やストレッチ、ウォーキングキャンペーン等の健康づくりを行ってもらう仕組みづくりをすることによりメンタルヘルス対策の予防策につなげている旨の報告を頂きました。印象に残ったことは、一人一人の定期健診結果に応じたコメントを書き添えたり、月に1回のメルマガや健康講話、職場巡視での社員への声かけ、全員面談等、産業看護職ならではのきめ細やかな対応を行っておられました。このような地道な産業看護職の活動が従業員からの信頼につながりより効果的な産業保健活動になるのだと思いました。
最後にC社保健師より、事業所移転に伴う業務量増大や心理的負担等の様々な
ストレスからの健康障害のリスクをあらかじめ予測し、対策を講じることで異動後の健康障害のリスクを予防・改善した取組みについて紹介頂きました。教育・研修や調査等のメンタルヘルス対策を講じるために、人事の理解を得て予算立てを行い、メンタルヘルス対策の効果を数字で前後評価されておられ、産業看護職の見本となる取組みだと思いました。
3名の保健師の発表を聞いて、保健師は労働者の人生の大事な節目に立ち会う
ことが多く、全員面談等を通じて労働者の心のケアをすることの重要性と効果を感じるとともにメンタルヘルスの一次予防の時代到来を改めて実感した次第です。
その後、3名の保健師より提供頂いたテーマに基づいてグループ討議が行われ、活発な意見交換が行われました。
そして最後に、アドバイザーの朝枝哲也先生(オムロン全社統括中央産業医)より従来の「職業性ストレス簡易調査票」と「新職業性ストレス簡易調査票」との違い等を説明頂き、労働者のストレスやメンタルヘルスはもっと広い職場環境要因をみていく必要性があることやストレスチェック制度の課題等、大変分かりやすくご講義頂きました。
報告会終了後にとったアンケート結果より「レベルの高いお話を聞かせて頂き
とてもためになった」、「他の企業の方と情報交換ができる貴重な場であった」「内容がよかったので時間が短く感じた」など多数の好評な意見も聞かれ、参加者にとって有意義な研修になりました。今年度の3月にも産業保健スタッフ活動報告を予定しております。産業保健スタッフの皆様、是非ご参加ご発表のご協力をよろしくお願いします。
最後にお知らせです。「日本産業ストレス学会」が、毎年1回全国で開催されていますが、今年度は京都テルサで平成27年12月11日(金)~12日(土)で開催されます。“メンタルヘルスの一次予防”、“ストレスチェック制度”、“発達障害”等今話題の講演が多数予定されています。産業医、産業看護職、臨床心理士、産業カウンセラー、人事労務担当者、学生等、毎年700~800名の方が参加されています。
センターも後援をしております。是非、ご予定頂ければと思います。
(第23回日本産業ストレス学会HPhttp://www.sangyo-stress23.jp/index.html)
村田 理絵