産業保健コラム
高田 志郎
所属:(一財)京都工場保健会 顧問
専門分野:健康、安全、環境の分野
個人サンプリング法による作業環境測定について
2021年9月1日
労働安全衛生法では、第65条において、事業者に対して有害な業務を行う作業場において、定期的に作業環境測定の実施およびその結果に基づく評価の実施を義務付けています。しかし、今年の4月1日から、従来の測定方法に加えて「個人サンプリング法」と呼ばれる測定方法が加えられました。これは、たいへん重要な関係法令等の改正なので、当センターにおいても一昨年から説明のための研修会を計画しましたが、コロナ禍の中で実施することができませんでした。現在も計画中ですが、取りあえず、当メルマガで概略について紹介したいと思います。
従来の作業環境測定は、「場の測定」と言われていますように、対象となる作業場に測定点を設定して、各点における気中濃度を測定することにより、職場環境の評価をしていました。今度、追加された個人サンプリング法は、その作業場で従事する複数の作業者に「個人サンプラー」を装着して長時間の移動測定をすることにより職場環境を評価することが認められるようになりました。また、測定の対象となる物質は、特定化学物質のうち有害性が高く管理濃度の値が低いものおよび鉛そして有機溶剤等とされています。
また、従来法または個人サンプリング法による作業環境測定の実施については、作業の内容等により、事業者がどちらかを選ぶことができます。その際には、産業医の先生、社内の衛生委員会・衛生管理者等とも相談の上決めていただくことをお勧めします。ただ、個人サンプリング法による作業環境測定を行うときは、個人サンプリング法について登録を受けた作業環境測定士に実施させる必要があります。作業環境測定を外部に委託している場合は、同じく個人サンプリング法について登録を受けた作業環境測定機関に委託することとされています。すでに、多くの測定機関および測定士がこの登録を受けていますので、あらかじめご相談ください。
これらについては、改正の経緯等についても十分理解していただく必要がありますので、今のところ開催未定ではありますが、ぜひ、研修会にお越しいただいて、どちらの測定方法が自社にとってのメリットになるかご検討ください。また、研修会の前でも、当センターに質問等をお寄せいただければ、お応えさせていただきます。
高田 志郎