産業保健コラム

桑村 明男


所属:(一社)産業安全衛生研究所 理事長

専門分野:産業衛生・労働衛生工学

働き方改革と健康経営

2019年10月1日

2019年4月の「働き方改革」の3つの柱として
1.長時間労働の解消
2.非正規と正社員の格差是正
3.高齢者の就労促進
が示されました。
この背景にあるのが深刻な労働力不足です。
国立社会保障・人口問題研究所が発表した出生中位推計の結果から計算
すると、生産年齢人口は
2020年 約7490万人
2040年 約5990万人
2060年 約4800万人
となり5000万人を割り込みます。
このままでは、我が国全体の生産力低下、国力の低下は避けられません。

 

企業にとっても慢性的な人手不足を抱え退職者休職者対策に追われ
さらに本来なら従業員一人ひとりに合ったプログラムで人材育成を図り
たいところが、その余裕もないのが現状です。
そこで、この「働き方改革」を「健康経営」への取組みに関連付けてみて
は、と考えました。

 

「健康経営」の目的は4つあると思います。
1.生産性の向上
健康経営の取り組みを通じて心身共に健康で活躍できる社員が
増えれば、一人ひとりの生産性が向上し、企業の収益増につなが
ります。
2.医療コストの削減
健康経営の推進によって医療機関にかかる社員が減れば、健康
保険組合の医療負担も下がり医療コストの削減が実現できます
3.優秀な人材の確保
経産省が就職活動中の学生に実施した調査において、就職先に
望む勤務条件として「従業員の健康や働き方への配慮」を挙げる
学生が多かったそうです。健康経営に取り組む姿勢をアピール
することで、優秀な人材の獲得が期待できます。
4.企業イメージの向上
先に示したように労働人口が減少している中で、優秀な人材を
いかに確保するかは企業にとって重要な課題です。人材確保を
真剣に考えるなら、「従業員の健康を大切にしている」という
イメージは欠かせません。

 

では「健康経営」に実際に取り組むにはどのようなアクションを起こせば
いいのでしょうか。3つあると思います。
1.ルールづくり
従業員が健康診断やストレスチェックを確実に受診できるよう
ルールを作り、それを周知・徹底する。また、ジムに通うといっ
た健康活動を補助するルールを整えることです。
2.環境の整備
健康に配慮したオフィス、あるいは作業場作りです。
3.意識づくり
従業員が健康に意識を向けるように働きかけ、自ら健康になる
ためのアクションを起こせる「意識」を養うことです。

 

以上、紙面の関係で簡単にご紹介しましたが、健康経営の推進によって
働き方改革も促されることになります。その意味で、健康経営に取り組む
ことは企業にとって有益といえます。

桑村 明男