産業保健コラム
桑村 明男
所属:(一社)産業安全衛生研究所 理事長
専門分野:産業衛生・労働衛生工学
「健康経営」への取組み
2023年7月3日
以前の当コラムで「健康経営」について書かせていただきました。
その際に、「健康経営」に実際に取り組むにはどのようなアクションを起こせばよいのかとして、3つの課題を提案致しました。
1.ルールづくり
2.環境の整備
3.意識づくり
の3点でした。
1.ルールづくりについては、従業員が健康診断やストレスチェックを確実に受診できるルールを作り、それを周知・徹底する。また、ジムに通うといった健康活動を補助するルールを整えることでした。
2.環境の整備については、健康に配慮したオフィス、あるいは作業場作りでした。
3.意識づくりについては、従業員が健康に意識を向けるように働きかけ、自ら健康になるためのアクションを起こせる「意識」を養うことでした。
この提案の後、このような課題を推進することで健康経営づくりを進め、最終的に「健康経営優良法人」の認定も受けたいという企業に対し、一緒に取り組みを進めさせていただくことになりました。以下、その経緯です。
まず、1のルールづくりです。
過去の設問集から健康診断やストレスチェック、さらに運動習慣の定着に向けた具体的な支援等関連する設問をすべて抜き出し、1問ずつ丁寧に現状と比較する作業を行いました。当然、法定項目はすべて実施していましたが、それ以外はまったく出来ていない項目が多く、格差の大きさに愕然としました。
そこで、出来ていない項目に対して、対策を行う場合に、時間のかかるもの、すぐにできるもの、予算が必要なもの、そうでないもの等々複数の項目に分けて取っ掛りを探しました。
その結果、予算不要または少額の予算ですぐにできることと言った負担の少ない取り組み内容が明確になり、ここから順次取り組んでいくことになりました。
さらに担当の役員にお願いして予算を取っていただき、年度をまたいで実施した大きな改善事例もあります。これはしんどかったです。
大切なことは、ルール作りですから、取り組んだ内容のすべてを職場のルールとして定着させなければなりません。そのために各職場を回って説明したり、文書を配布して周知に努めました。
第2の取組みは、環境の整備です。
本社のオフィスは従前より問題はないと思っていたのですが、喫煙率を下げるための取組みなど、支社も含めてまだまだ遅れていたので上記1の取組みと関連しますが、喫煙に関するルールを遵守するよう安全衛生委員会で決議し全社に通達しています。
第3の取組みは、意識づくりです。
ここは定期健康診断前の受診促進活動、さらに健診後の2次健診受診の徹底等、従前より行っている活動の再徹底を行うことで充分ではないかとの意見もありましたが、女性従業員や高齢従業員特有の健康課題等に関する取り組みの中で、まだ充分でない項目があるのではないか、女性従業員や高齢従業員の意識作りがまだ充分できていないのではないかとの意見も出て再度見直しを進めることになり、勉強会や面談などを経て意識作りの一端を担うことが出来ました。
その結果、2021年より健康経営優良企業として認定を受けることができました。
【桑村相談員 過去のコラム】
https://www.kyotos.johas.go.jp/wp/archives/staff/staff-5172
桑村 明男