産業保健コラム
桑村 明男
所属:(一社)産業安全衛生研究所 理事長
専門分野:産業衛生・労働衛生工学
健康寿命の延ばし方
2017年11月1日
先日、日経新聞に「健康寿命2年の違い」という記事が掲載されていま
した。
健康的な生活をした場合は、要介護になったり亡くなったりするリスク
を半減できるそうです。また、健康寿命が最大で2年の違いがあることも
分かったそうです。
一部引用させていただきますと、厚労省研究班は「健康的な生活習慣」
の判断材料として
①たばこを吸わないか禁煙して5年以上 ②1日に平均30分以上歩く
③平均睡眠時間が6~8時間 ④野菜を多めに取る ⑤果物を多めに取る
の5項目を検討したとあります。
その結果、5項目すべてに該当する人は0~1項目の人と比べて、死亡した
り要介護認定になったりするリスクが半分程度になったそうです。
以前、ある企業から喫煙室の粉塵や風速測定の依頼があり、場内数か所
の喫煙室の測定を行い報告したところ、データはそれほど悪くなかったの
ですが、1か所は場外に移動し、他はすべて廃止したそうです。トップの
健康増進への思いが反映された結果と聞きました。
また運動について、この新聞記事を読んで思い出した書物があります。
DE MORBIS ARTIFICUM DIATRIBA:Bernardino RAMAZZINI(働く人の病:
東 敏昭監訳、財団法人産業医学振興財団)です。
この中に「座仕事をする人々の病気」という章があります。取り上げてい
る職業は現代ではあまり見かけることのない職業ですが、座仕事での障害
やその対策については今でも十分当てはまるものだと感心しました。「座
(作)業者は仕事柄前かがみにならざるを得ないので、最も外側の脊椎靭帯
は、引き伸ばされ硬くなる。そのため、自然な姿勢に戻すことができなく
なる。(略)これら作業者は、いつも病気がちで、座ってあまり動かない
生活のため病的な体液が過剰に蓄積してしまう。(略)よく動くことによ
って血液中の不純物が分散され易いために、健康状態が保たれる」とあり
ます。
日々机上のパソコンとにらめっこしながら仕事をしていますが、運動不足
は否めず、せめて愛犬との散歩を30分以上にしなければと思っています。
NHKスペシャルで「睡眠負債」の特集を放映していました。ホームぺ
ージ(http://www.nhk.or.jp/special/sleep/detail.html)に番組内容が紹
介されています。
番組によりますと、日本人の睡眠時間は短くなり続けているそうです。睡
眠時間が6時間以下の人は2008年には全体の30%未満でしたが、2015年の
データでは40%近くに急増し逆に7時間以上の人は大幅に減った(34.5%
→26.5%)ようです。
また、スタンフォード大学で睡眠と認知症との関係をマウスを使って実
験した結果、睡眠中にアミロイドベータと呼ばれる「脳のごみ」が排出さ
れることを突き止めたそうです。アミロイドベータは、認知症の最大の原
因であるアルツハイマー病の原因物質とも言われていて、発症の20~30年
前から蓄積するといわれています。つまり、働き盛りの時期に十分な睡眠
をとっていないと、数十年先に認知症になるリスクを高める可能性がある
とのことです。
やはり「寝る子は育つ」はいくつになっても当てはまるのでしょうか。
禁煙、運動、睡眠そして最後に食事です。
デパートのサラダ売り場はいつも盛況です。最近はコンビニやスーパー
でも野菜をすぐに食べられる状態で販売しています。大変便利でよく利用
させていただいています。ただ、これからの季節は出来れば温野菜中心の
献立がいいですね。冬の野菜は体を温めたり(大根など)、風邪を治したり
(ねぎは殺菌力があります)、味わいながら身体を守ってくれます。食後の
デザートに果物もいいのですが、食べ過ぎにご注意!果物を食べ過ぎると
内臓脂肪などが付きやすくなるそうです。ダイエット中の方は少なめがい
いかも知れません。
桑村 明男