産業保健コラム

岡本 浩


所属:岡本労働安全衛生コンサルタント事務所

専門分野:健康、安全、環境の分野

化学物質のリスクアセスメントの現状

2019年12月2日

平成28年6月の労働安全衛生法の改正によりSDS交付義務対象である673の化学物質についてリスクアセスメントが義務付けられたことはご承知のとおりです。厚生労働省はその実施状況等について、無作為に抽出した約14,000事業所の調査結果(平成29年安全衛生調査)を公表しています。

 

調査では6項目のリスクに分けて問う内容です。作業に用いる化学物質の危険性・有害性に関する事項はその内の一つで、規模別に1,000人以上の規模の事業所で79%、500~999人で74%、300~499人で63%、100~299人で49%、50~99人で39%、30~49人で42%、10~29人で33%、平均で37%(平成28年31%)の実施率でした。

一方、安全面の作業に用いる機械の危険性に関する事項については、10~29人の事業所規模においてもその実施率は61%であり、平均63%(平成28年63%)でした。努力義務である機械安全のリスクアセスメントの方が、義務化された化学物質のリスクアセスメントの実施率よりも高いのは遺憾に思うところです。

 

平成30年の安全衛生調査の公表結果では、事業所の実施率として義務対象物質すべてリスクアセスメントを実施している29%、一部実施している14%、実施していない5%、該当化学物質を使用していない11%、該当化学物質を使用しているかわからない25%でした。
このわからないと回答した事業所が25%もあるというのは、実施率が低いこと以上に心配です。無関心なのか、理解できないのか、どちらでしょうか。化学物質の名称が難しいことも、その普及を妨げる一因であると考えますが、厚生労働省支援ツールの一つであるコントロールバンディング法では液体・粉体作業等について、一項目10分もあれば、誰にでもできます。こんなに簡単なことかと拍子抜けされるかも知れません(職場の安全サイトを検索して下さい)。
実施率を上げて化学物質への意識を向上させましょう。

 

厚生労働省 職場のあんぜんサイト-化学物質
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/kagaku_index.html

岡本 浩