産業保健コラム
篠原 耕一
所属:社会保険労務士法人 京都綜合労務管理事務所 所長
専門分野:労働安全衛生関係法令・労働基準関係法令
労働安全衛生法と労働災害
2016年7月1日
わが国における労働災害による死亡者数は、昭和36年の6,712人をピー
クに長期的に減少を続け、平成27年の死亡災害の発生件数は統計上初めて
1,000人を下回りました。
働いていて生命を落とすようなことは決してあってはならず、今も前年
で972名もの尊い命が失われていますが、1,000人を下回ったことは、産
業界をはじめ、安全衛生関係機関、行政機関の長きにわたる継続的な取組
が実を結んだものと言えます。
特に大きな原動力となったのは、労働安全衛生法の制定であり、それま
で労働基準法の中で規定されていた労働安全衛生規定が体系化され、昭和
47年10月1日に新法として施行されたことにより、その後4年間で死亡災
害は激減し、その後も労働安全衛生法令は改正を重ね、死亡労働災害の防
止に大きな役割を果たしてきました。
一方で、近年の高止まりする自殺者数や脳心臓疾患による死亡者数の中
にも、顕在化(労災申請や労災認定)していないものの、業務に起因する
ものが多数含まれているのではないのかとも考えらえており、産業構造の
変化にも合わせ、ストレスチェックやリスクアセスメントに代表される先
取り型の安全衛生規定をはじめ、今後も益々労働安全衛生法令の「中身の
充実」が労働災害防止に大きく寄与していくものと考えられます。
篠原 耕一