産業保健コラム
櫻木 園子
所属:(一財)京都工場保健会 産業保健推進部 医療次長
専門分野:産業医学
情報について思うこと
2022年3月1日
一昨年から続く新型コロナウイルス感染症対策では、状況の変化に対応するため、最新の情報を確認する必要があります。産業医として正確な情報を伝えるためにインターネットを検索すると、元の情報は政府から出ていると思われるのに、政府が発表している資料を見つけるのに苦労することがあります。ほとんどが「自治体・医療機関向けの情報」の中にあるのですが、それでも探すのに時間がかかってしまいます。学生時代に、「情報には、『自分がそれについて知っている』情報と、『それについての情報がどこにあるか知っている』情報がある。前者には限りがあり、後者の情報が大切」と教わったことが身に沁みました。新型コロナウイルス感染症を巡っては、インターネットやメディア、個人のつながりの中で様々な情報が飛び交い、科学的根拠のないものも含まれています。感情を掻き立てる誤情報を、科学的な根拠を持って理性的に修正しようとしてもなかなか通じずに残念に思う場面があります。正確に伝えなければ、と思うあまりに情報を詰め込みすぎて分かりにくくなったり、分かりやすくしようとして簡略化しすぎて誤解を生んだり、伝えるというのは難しいことだと思います。それでもあきらめずに、正しい情報を発信していきたいと考えています。そして、皆さんが情報を集めようとするときに、その情報源が信頼できるかどうかを判断することも大切です。健康についての情報では、政府や公的機関が発表しているもの、各診療科を代表する学会の情報などです。「政府は信用できない」という人がいたり、「学会」と名がついていても実は偏りがあったりと一筋縄ではいかないところもありますが、一人ひとりがヘルスリテラシーを高められるようにと願います。
櫻木 園子